キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
目をそらして、弱々しくしか言えなかった。
そしたら彼が「そっか」と微笑んだ。そして地べたに座り込む。
「じゃあそういうことにしとく。綾瀬さんが話したくなるまで待つわ」
ニッと白い歯を見せる彼。陽だまりのように明るくて、優しい人だ。出会ってからまだたったの数分だけれど、私の中の彼の印象はそうだ。
彼の黒い髪が風に揺られている。大きなアーモンド型の目は、笑うと垂れる。瞳が大きくて、とても綺麗。着ているシャツの袖は捲られていて、そこから出ている腕には男の子らしい筋肉と血管。見惚れていることに気づいて、慌てて目線をそらした。
「綾瀬さんも座りなよ」
「え……」
「ほら。空見てると気持ちいいよ?」
自分のすぐ隣をぽんぽんと叩いて、私が腰を下ろすのを催促している。
私は遠慮がちに座った。距離は人が一人と半分ほどだろうか。
彼に倣って空を見る。風の匂いと太陽の光。先ほど感じた爽快感がまた心を浄化していく。私の心がどれだけ荒んでいたのかを改めて実感する。だけど、まだまだ癒しきるには足りない光。
「綾瀬さんさ、また屋上においでよ」
「……?」
「ね」
隣にいる彼が、にっこりと笑った。その顔があまりに眩しくて、私は素早く頷くことしかできなかった。
こういうとき、綾瀬美樹は、どんな反応をする女の子なのだろう。
私は綾瀬美樹になりきったほうがいいのだろうか?なりきる努力をするべきなのか?
そういえばあまり考えてなかったけれど、私は、いつまで綾瀬美樹のままなのだろう?
この夢はいつ、覚めるの?
これが現実なわけ、ないし……。