キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。


理香子ちゃんが自殺するとしたら、どこで、どんな風にするか、ひたすら考える。


でも、学校でひとりで死ぬなんて、方法は限られてくる。私は迷わずに階段を駆け上った。


屋上の扉を思い切り押し開けると、そこにはフェンスの向こう側に立つ理香子ちゃんの後ろ姿が見えた。よかった、見つかった。



「待って!理香子ちゃん!」

「……っ……」



振り返った理香子ちゃんが驚いた顔をした。頬には、大粒の涙が滝のように流れている。
荒れた呼吸。肩で息をして、整えるよりも先に口を開く。



「死んじゃだめ……っ」

「ゆりちゃん……っ、足が……っ」



理香子ちゃんが私の足を見ている。私もチラリと視線をやる。血が、思ったよりも流れているようだった。だけど痛くないし、そんなことは今はどうでもいい。



「死ぬなんて、絶対許さないから……っ」

「どうして?」

「私は、死んで後悔してるよ……っ?辛いなら、学校に行かなくていい。誰かを信じられないなら、無理に信じなくていい。頑張らなくて、いいんだよ。今までの自分に戻ろうとしなくて大丈夫だから」



いじめられる前の自分に戻りたいと思うよね。だけどもう戻れなくて、そのジレンマで苦しくなるんだよね。


真っ直ぐに人を信じて、優しさの裏を考えずに受け取れる真っさらな心を取り戻したい。
それでもいじめられた後遺症は、一生、付きまとってくる。
人が、人と関わるのが怖くてたまらないんだよね。


だけどつけられた傷と、無理にうまく付き合おうとしなくていい。
そうなれるまで、いくらでも時間をかけていい。焦らなくて、いいんだ。


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