キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
理香子ちゃんがフェンスを乗り越える。そして面と向かって目が合った。
「生きてくれる?」
私の問いかけに、理香子ちゃんは深く頷いた。
「生きるよ。生きて、みる」
力強い言葉に、私は安堵を笑顔として表情にこぼした。
大切な人の未来が、明るく輝いていることを願う。
理香子ちゃんの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
私は、強く、そう祈るよ。
***
「その怪我、どうしたの?」
体育館にふたりで向かうと、笑っているはずなのに、目が笑っていない隼人くんに迎えられた。
体育館ステージの脇、次が隼人くんの出番で、控えていたらしい。ギリギリのところで間に合ったのだ。
私もアハハと乾いた笑みを返すことしかできない。
「保健室に行くよね?」
「いや……保健室には行けない、かも……」
窓ガラス割ってるし。
流血してるってことは、たぶん、至る所に血を巻き散らしてしまっているかもしれない。
目に見ついたところは、体育館に来る前にささっと拭ってきたけれど……。
さすがに犯人の私が現場には……戻れないだろう。いや、戻りたくないのだ。
「はぁ……じゃあ水でよく洗って、これで傷口押さえてて」
「うん……」
「手品のアシスタントは安田さんだけでいいから。ゆりは客席で見てて」
手渡されたのはハンカチだった。
せっかく今日、初めて隼人くんの手品のお手伝いができるとそう思っていたのに。
でも理香子ちゃんの命が助かったんだから、いいか。しょうがないよね。命には、代えられない。
言われた通りに傷口を洗い、ハンカチを怪我をした足に当てた。
そのあと客席でクラスメイトたちが座る場所まで向かい、着席した。