キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
そして、それぞれの十月二十日
《side*H》
太陽の光が眩しい。青い空、白い雲、そして爽やかな風が吹く、朝。目覚ましの音に起こされて、僕はベッドから起き上がった。
登校中、この田舎町の風景が美しいということを、僕は改めて感じた。なぜかは、わからない。昨日後夜祭のあと、なぜかひとりで屋上にいて泣いていたこととなにか関係があるのだろうか。
なにかを失った悲しみが、心に蔓延っている。そのことに頭が冴えていくと同時に段々と気づいていった。
けれど、なにを失ってしまったのかわからないのだ。
ただ喪失感に苛まれている。その事実は変わらない。
朝登校すると、隣の席にはなにやら神妙な面持ちをした綾瀬さんがひとりで座っていた。
いつもはそんなこと気にしないのに、彼女の表情を確認してしまった。
まるでなにかの習慣みたいに、意識などせず。
「……なに」
「いや……」
あまりに見つめすぎて、彼女に怪訝な顔をされる。
ふと廊下を見ると、安田さんがちょうど登校してきたところで、誰とも挨拶を交わすことなく席に座った。
……会いたい。
ふと、そんなことを、願った。
誰に?誰に会いたい?……わからない。
空を見る。屋上へ行こうと席を立った。