キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
きっと、プロローグ
暗闇から一筋の光がこちらに向かって飛んでくる。そして、直撃した。
そんな風に、目が、覚めた。
瞼を薄っすら開けて、まばたきを数回繰り返す。意識が朦朧として、うまく思考回路が働かない。
ずっと、ずっと、長い夢を見ていた気がする。だけどどんな夢を見ていたのか、全然思い出せない。
ゆっくり、一回一回を噛みしめるようにまばたきをまた繰り返しながら、視界いっぱいに広がる天井を無意識に見ていた。
ここは、どこ……?
確認しようにも、身体が動かない。鉛のように重い。声も、出ない。
「っ、ゆり!目が覚めたのね……っ」
母の声がした。かろうじて動く目線を横に向けた。そこには泣き崩れた母と、その母を支えるように立つ父がいた。
お母さん……お父さん……。
会えた喜びに、いっきに涙があふれる。離れていたわけでもないのに、どうしてこんなに顔を見ただけで嬉しいのかわからない。
父がそっと母のそばを離れ、部屋を出て行った。母は私の手を握り「よかった」という言葉を繰り返した。私はただ泣き続けた。
私は……生きている。
そしてしばらくして、慌ただしく私が寝ている部屋にたくさんの白衣を着た人たちが入ってきた。それを見て、ここが病院だったことを知る。
よく見ると、自分の腕には点滴が貼り付けられていて、包帯もグルグルと巻かれていた。
均一な電子音は、私の心臓の音を刻んでいた。どうやら私は一ヶ月半、眠ったままでいたらしい。
ベランダから飛び降りたのに、死ななかったんだ。
だけどなんでだろう?
私の心のなかには、微かな安堵感が広がっていた。