キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。



あんなに、死にたかったはずなのに。
生きている。生きている喜びが心に充満している。
死ななくて、本当に良かった。本当の、本当に。



***



「あのね、お母さん、私ね……」



数日後。落ち着いてから、ずっと言えなかったことを家族に話した。
いじめられていたこと。恥ずかしくてそれを言えずにいたこと。耐えきれずに死ぬことを選んだこと。すべてを包み隠さず。


そしたら「気づいてあげられなくてごめんね」と更に泣かせてしまった。


だけど、私は、生きている。


目を覚ましたあとの世界は、目覚める前とはなんだか違って見えた。あんなに淀んでいた世界が、生まれ変わったように光に満ち、輝いている。


空の色。生えているなんでもないそこらへんの木。車道を走る車。隣を通り過ぎていく人たち。
今まで流れ作業のように見ていた景色たちが、特別なもののように見える。


私のなかで、なにかが変わったということなのだろうか?


曇っていたはずの心が、こんなに晴れやかだ。


先生と体調を見ながら私はリハビリに励んだ。自宅四階から飛び降りたんだ。マンション周りに生えている木や、ガーデニングがクッションになったとはいえ、そう簡単なリハビリではなかった。とても、過酷だった。


飛び降りた衝撃で右足に麻痺があり、自由に動かせない。自分についている足なのに、感覚がないだけで、こんなにも不自由になるのか。


意気消沈。気持ちも、かなり滅入っていた。


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