キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
息が、つまる。目が合うと屋上で見せてくれた微笑みをまたくれた。
……そう、今の今まで一緒にいた"彼"だった。
クラスメイトで、しかも、隣の席の男の子だなんて。私が美樹ちゃんじゃないこと、気づくよ、そりゃ。
変に意識してしまって、落ち着かない。
扉が開く。担任の先生が、教室に入ってきた。
「みんなおはよう。夏休み明けだが、明日早速テストあるから、気を抜かないようにー」
先生の言葉に生徒たちからブーイングが起こる。先生が「静かにしろー」と間延びした声をあげた。
隣にいる彼は隣席の友だちに話しかけられている様子で、笑顔で対応していた。大袈裟かもしれないが、まるで太陽が具現化したかのような、笑顔だ。
どんな生き方をしてきたら、彼のような笑顔の持ち主になれるというのだろうか。
みんなに愛されているのが伝わってくる。人気者なんだろうな、きっと。私と正反対な男の子だ。
「酒井隼人ー」
「はい」
出席確認をはじめた先生がその名前を呼んだとき、隣の彼が返事をした。どうやら彼の名前は酒井隼人というらしい。
酒井隼人くん。隼人、くん……。
心のなかで、彼の名前を呼んだ。
「次、女子な。綾瀬美樹」
隼人くん……。
「綾瀬ー?」
教室が変な空気を醸し出したことに、周りより遅れて気がついた。クラスメイトの視線がいっきに自分に集まって心臓が活発になる。
ふと隣の席に座る隼人くんと目があって「呼ばれてるよ?」と言われた。
なんのことかすんなり理解できずに前を見ると、今度は先生と目があった。
「どうしたんだ、綾瀬。返事は?」
「あ……はい。すみません、ぼうっとしてました」
「しっかりしろよー?まだ夏休み気分なんじゃないかー?」