キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。


屋上へ出ると、地上にいたときよりも風の存在を感じた。セーラー服のスカートが揺れ、ふわふわな癖っ毛の髪も揺れた。


屋上を囲っているフェンスは古い学校なのか、背が低い。簡単に飛び越えられそう。


もう一度、飛び降りるのも、ありかもしれない。


これはもう私の癖なのだけど、生きることよりも、死ぬことばかりを考えてしまうようになった。いつからなのかは、覚えていない。


自転車に乗っているときも、交差点に差し掛かると、"このままブレーキを使わずに道路を渡ったら、途中で車に轢かれて死ねるかな。それとも運良く通過できるだろうか"とか、通学していて、"通り魔に襲われたりしないかな"、とか。


死ぬ方法ばかりを考えてしまうようになった。


なにも考えずにフェンスを飛び越えた。フェンスに体重を預けて下を見る。運動場では朝からサッカーをして遊ぶ男子生徒数人がいる。


深呼吸した。鼻から通る生温い空気。


飛び降りてタイムスリップしたし、美樹ちゃんの身体の中に入ったのだから、もう一度飛び降りれば、戻るかもしれない。


二度目とはいえ、ここから一歩を踏み出すのはとても怖い。
痛いだろうし、苦しいだろう。


だけど生きているのも同じように痛くて、苦しい。
その痛みや苦しみを耐えて生きる利点が思いつかない。


それなら一瞬の痛みを我慢して、死んでしまったほうが楽だ。


カウントされている数字がゼロになったとき、どうせ死ぬのなら一ヶ月半無駄に生きる意味もないだろうし。

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