キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
さっさと終わらせよう。自分の手でピリオドを打とう。
自分の人生に。
「綾瀬さん?」
飛び降りる覚悟を固めていたそのときだ。
名前を呼ばれて、自分ひとりで完結していた世界に亀裂が入ったかのように、風が吹く。
この声は隼人くんに違いない。
振り向くと案の定そこには驚いた顔をして立つ隼人くんがいた。
「なに、してるの?」
震えたような声。心配しているような、困惑したような表情。
どうして隼人くんがそんな顔をしているのだろう。私には、わからない。
「……ここから飛び降りたら死ねるかなって」
「ダメだよ、そんなことしちゃ」
「どうして?」
「だって悲しむよ、みんな」
苦しそうな顔をしている。
まるで自分が当事者かのような。まるで関係ないのに。
そりゃ、みんなに愛されている美樹ちゃんが死ねば悲しむよね。
だけど新垣ゆりが死んでも悲しむ人なんていない。両親ぐらいだ。
「大丈夫。戻るだけだから」
「……?」
「私がここにいるのは間違いなの。私は死んだ人間なんだから」
だけどもう、生きた心地なんて半年前からしていなかった。
息をしていても、死んでいるも同然だった。
そう、正しい運命に戻るだけ。私がここで死ねば時間軸もきっと元に戻る。美樹ちゃんがちゃんとこの身体で生きていて、私はこの身体から出て行って、もとの身体と時間に戻って死ぬだけ。
「隼人くんは信じないかもしれないけど、私は綾瀬美樹じゃないの」
「……っ……」