キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
死ぬから、もうどうでもいい。
この話を隼人くんが信じるも信じないも、もはや関係ない。
ここから飛び降りて、私は、私の存在は消えるのだから。
「きみが誰であっても……」
悲痛に顔を歪ませたまま、隼人くんは続ける。
「目の前で人が死ぬのは嫌だ。少なくとも僕は悲しい気持ちになるよ」
フェンス越しのふたり。緊張感のある雰囲気。自分の心臓の音がやけに誇張して聴こえる。
「そうだよね。目の前で死なれたらトラウマになるよね……」
「そういうことじゃない。僕たちは出会ったんだから。知ってる人が死ぬのは誰だって悲しいに決まってるだろ」
一歩、一歩。彼が私のに近づいてくる。私は警戒心を露わにするように顔をうつむかせた。
近寄らないでほしいと、本能的に思ってしまった。
それでも真っ直ぐに差し出された手に、驚く。
「こっちに来なよ。危ないよ、そこ」
綺麗な、でも大きな手だった。
私は意固地になって、動かないでいる。正直気持ちは揺らいでいた。
だって、私に「死ね」という人はいても、「死んだら悲しい」と伝えてくれる人なんていなかったから。
「じゃあこうしよう」
「……?」
「きみのことを教えて。僕はきみのことが知りたい」
彼が提示した案。私はまばたきを繰り返した。
「名前は?」
「……ゆり。新垣、ゆり」
彼が伸ばしていた右側の手が、私の左手をゆっくり掴んだ。
「じゃあゆり、きみはいくつなの?」
「十六」
「じゃあ僕と同じだね」