キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
優しい声。ゆっくり指を絡める。強く握られて、目が合う。微笑まれて、雲に隠れていた太陽が顔を出した。
「ゆり」
名前を呼ばれて、私の瞳に涙がたまる。
そんな風に、大事そうに、名前を呼ばないでほしい。
荒んでいる心には、あったかさが染みる。
ずっと「幽霊」と呼ばれてきた。
生きているのに、見えないふりされてきた。
もう死にたいと何度も何度も心に刻んで、自殺した。
なのにどうして神様は最後の最後で、こんな温かい人のところに私を飛ばしたの?
フェンスを乗り越える手伝いをしてもらった。その拍子に彼の胸のなかに飛び込んでしまったのだけど、そのアクシデントですら彼は快く受け入れて「大丈夫?」とまで声をかけてくれた。
頷くとそのままの距離で彼の親指が器用に私の目元に溜まった涙を拭った。驚いてあからさまに身体が固まってしまう。
「ごめん、強引だった?」
左右に首を振った。左手はまだ彼の右手と繋がれたままだ。
「そっか、よかった。落ち着くまで座ってよ」
「うん……」
ふたりで腰をおろした。
寒くないのに、身体が震えていた。
「ねぇ、ゆり」
隼人くんが私の手を離した。そしてポケットからトランプを取り出して、それをシャッフルした。
その様子を見ていると、扇状に広げた隼人くんが「一枚選んで」と促した。
私は言われるがままに適当に一枚トランプを引いた。私が引いたのはクローバーのキングだった。
「それ覚えてて」
「うん……?」
「覚えたら、適当な位置に戻して」