キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。



「どうしたの?」

「昨日理香子ちゃんに"あなた美樹じゃないでしょ"って言われたの……」

「安田さんに……?」

「うん」



顎に手を当て、考える仕草をする隼人くん。



「綾瀬さんと安田さん、仲良いもんなぁ……」

「どうしたらいいかな?」



不安に駆られると、どこまでも深く考えてしまう。悪い思考は止まらない。良いことに対しては、"そんなことない"って簡単に歯止めがかかるのに。


私のことを疑っている理香子ちゃんと顔を合わせるとき、どう振る舞えばいいのかまるでわからない。テンパってしまう自分しか想像できない。


ハキハキものを言う美樹ちゃんとの差が、また発生してしまう。



「様子を見てもいいかもね」

「うん……」



だけど、本当にそれでいいのだろうか?逃げていいのかな?


そう、考える自分がいた。日記で読んだふたりの姿が脳裏でチラついている。ふたりとも極上の笑顔だ。



「……理香子ちゃん、本当に美樹ちゃんのことが好きだよね」

「うん」

「それじゃずっと不安な想いにさせとくの、ダメな気がする……。美樹ちゃんの様子が変だって、モヤモヤさせたまま、一ヶ月半も騙すのは……」

「…………」



語尾が弱くなる。


私の方から意見を求めておいて、否定的なことを言うのはよくないことなのではないかと、言い終えてから怖くなった。


けれど、隼人くんは真剣な眼差しで「その通りだね」と言ってくれた。
頷いて、「話してみる」と自分を鼓舞するように呟いた。


臆病な私にとっては言葉にするより、実行することの方が何倍も難しいことなのだ。それが自分でわかるから、ドキドキしてしまう。


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