キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
それは、笑顔が咲く魔法
──ピリリリッ。
聞き慣れない目覚ましの音が鼓膜を揺らした。
無意識に音の鳴るほうへ手を伸ばして、丸い目覚まし時計を取ると、音を止める。意識が冴えないまま起き上がると、自分の周りの状況を見る。
ここ、どこ……?
知らない部屋のベッドの上。なぜか着ていたはずの制服は、半袖半ズボンのジャージに変わっている。
ゆっくり周りを見渡すと自分の部屋にはない机や棚があり、フローリングだったはずの床は畳になっていて、カーテンが半分開いている窓から外を見ると、見覚えのない景色が広がっていた。手入れされている庭なのか、綺麗な花たちが咲いている。名前は、わからない。
寝起きの頭で推理しても、どうやらここは私の部屋じゃないことがわかる。
いや、そもそもなぜ自分がまだ生きているのかが最大の謎だ。
私、死んだはずじゃ……。
まさか、マンションから飛び降りて死ねてないなんてこと……ないよね?
混乱した頭。ふと大きな鏡を見つけて、その前に立つ。そしてその姿見に映った自分を見てもっと頭が混乱した。ガッと勢いよく鏡のふちを両手で掴んだ。
「……っ!?」
誰⁉︎この鏡に映っている女の子は……⁉︎
肩につくぐらいのミディアムヘアーはすこし癖っ毛なのか、ふわふわしている。目も二重だし、唇はすこしふっくらしている。こんなの、私じゃない。
長い黒い髪の毛も、つり上がったような強い目も、薄い唇もない。青白くて不健康そうな肌でもないし、ガリガリな体でもない。
すこし肉づきがよくて、背も低い。頬は寝起きのはずなのに、ほんのりピンク色をしている。まるで私のクラスにもいた、愛されるような女の子の姿だ。これ、本当に鏡?
凝視した。私がまばたきすると、鏡に映る女の子もまばたきをする。ほっぺを指でつまむと、鏡の女の子も同じ仕草をした。鏡に映ってる女の子は紛れもなく私であることを証明した。
わけが、わからない。
ベランダから飛び降りたはずなのに。どうしてこんなことに……?