キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
どうして私、知らない女の子の姿で生きてるの?
「美樹、起きてるの?」
「……っ……」
驚いた。突然足音が近づいてきて、あっという間に部屋の襖が開いたのだ。そこから顔を出したのは、鏡に映る自分にすこしだけ似ているおばさん。おそらく私の……お母さん……?
そして、美樹は、私の名前……?
「起きてるじゃない。今日から学校でしょ。準備しなさい」
「う、うん……っ」
条件反射でぎこちなく返事をすると、不思議そうな顔をした目の前のお母さんらしき人が「今日はやけに素直ね。変な子」とだけ呟いて襖を閉めて行ってしまった。突然のことで力が抜ける。
今日から学校……?
ふと視線を泳がせた先にある机の上に、スマホとノートが置かれてあるのを見つけた。徐に近づいて、スマホを手に取った。
スマホの画面を見て、さらに状況が掴めなくなる。日付が九月一日になっていたのだ。部屋の壁に飾られているカレンダーも九月のページになっているし、スマホが壊れているわけでもなさそうだ。朝なのに、体感温度も若干暑い。夏の残り香と言われれば、頷ける。
これが現実なら、四十九日も時間が遡っていることになる。まったく、あり得ない。あり得ないことばかりが、私の身に起きている。
さらにスマホのとなりに置いてあったノートの表紙には【20XX年日記】と書かれてあり、今年の四月から書き出された日記らしかった。
パラパラとページをめくると、その日起こったことや、感じたことが書き綴られていた。毎日、欠かさず。
【四月一日。
今日から高校生!先生は真面目そうな人だったけど、となりの席の安田理香子ちゃんと仲良くなった!そしてめっちゃかっこいい人もいた。気になる。】
ところどころをピックアップして、読む。
【五月四日。
放課後、理香子ちゃんと遊んだ。プリクラ撮った。可愛くて、面白い理香子ちゃんが大好き。】
そのページには、その日撮られたものであろうプリクラが貼られてあった。先ほど確認した自分と、髪の短い活発そうな女の子が写っている。この子がきっとその理香子ちゃんなのだろう。
どうやら私は、同じ年の女の子の身体のなかに入ってしまっているらしい。