キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
らしいと言っても、この状況をこのまま鵜呑みにしていいのかわからない。
なにがどうなってこうなってしまっているのか、まったく理解しがたい。
私、死んだんじゃないってこと……? 生まれ変わったってこと……? いきなり同じ年の、女の子に……?
でも私のなかにはまだ"新垣ゆり"の記憶は、ある。なくなってなどいない。これじゃ生まれ変わっただなんて言えない。到底「やった!」などと晴れ晴れとした気持ちになんてなれないし、絶望しかない。
だって、忘れたかった出来事はなにひとつとしてなくなっていないのだ。いじめられた記憶も、自分が飛び降りて地面に叩きつけられた瞬間の記憶まである。
自分の肩を抱く。震えが止まらない。
これは、夢……?
私はいま、夢のなかにいるの……?
乱れた呼吸。いくつか深呼吸をして、落ち着いてきたところで「美樹!なにしてるの!早く学校行きなさい!」との怒鳴り声が響いた。
目を、見開く。
学校に、行かなくちゃいけない……?
おずおずと押入れを開けると、制服が、張られた突っ張り棒にかけてあった。私が着ていたブレザーの制服とは違ってセーラー服だ。
気乗りしないまま、その制服に袖を通した。なにがなんだか、わからない。言われるがままに準備を整えていく。これでいいのか、わからない。けど、また怒られて、状況を悪化させるのは得策とも思えない。とりあえず、従おう。
「お、おはよう……」
廊下を進み、リビングを見つけた。この家はどうやら平屋らしい。リビングの奥には縁側もあるようで、朝日に照らされたガーデニングの花たちがキラキラと輝いている。
木でできた大きな低いテーブルの上には朝ごはんが用意されてあって、父らしき男性が新聞を読みながらそれを食べていた。
そして先ほど顔を見せた母らしき人はキッチンと言うよりは台所でせっせと調理段階で使ったものを洗うことに勤しんでいた。
「早く食べちゃいなさい」
「う、うん……」
母に声をかけられて、ぎこちなく頷いた。
無口な父らしき人の前に座り、ピンク色のお茶碗によそわれたご飯を手に持った。一口、二口と、ご飯をぱくぱくと飲み込んでいく。
私、なにしてるんだろう……。