キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
死んだはずなのに……。
死んだ、よね……?
これは……夢?
「ご馳走さまでした。行ってきます」
かばんを持って家を出た。驚いた。目に映る景色があまりに田舎すぎて。
一歩家の外に出ると、そこは畑、田んぼ、平屋しかなく、視界に映る割合的には空の青と緑がほとんど占めている。
かろうじて整備されてある道路の脇を歩く。草と土の香りが鼻をかすめ、鳥の囀りや蛙の鳴き声さえ聞こえる。
はじめて来た、こんな田舎。
スマホと念のために日記を持ってきていた。かばんの中には学生証があったから、学校の名前とクラスを知ることができた。
スマホでその学校の名前を調べて、マップで場所を調べた。ここから歩いて行ける距離で良かった。
それにしても夢にしては壮大すぎるし、細かい設定はやけに現実的すぎる。土を踏みしめて歩く感触や、感じる風の温度さえリアルだ。
これが夢だったとして、神様は最後に、私にどんな夢を見せてくれるのだろうか。あまり、期待はできないけれど。
神様には何度も願った。やめてくださいと。私にもう乗り越えられない試練を与えないでくださいって、何度も心のなかで懇願した。いじめられない人生をくださいって。
けれど聞き届くことはなかった。だからこそ、私は飛び降りた。死ぬことを選んだ。
……はず、だったのにな。死ねたのかも、わからない。死ねてないのは困るのだけど。でもマンションから飛び降りて死ねないなんてないはずだ。そうだと思いたい。
これはもしかして夢じゃなくて、走馬灯というやつなのかな?誤作動で知らない身体で、知らない土地の風景が流れているだけ?それとも、ここが天国?にしては、すこし貧相な、と言ったら失礼かもしれないけど……。
なんてことを考えてナビを見ながら歩き、ほどなくして学校に到着した。クラスは一組だったので探し当てた下駄箱で挨拶されたクラスメイトの女の子の後を少し距離を空けてついて行った。
挨拶されるってことは、それなりにクラスメイトたちとうまくいっているってことなのかな。美樹って、女の子は。