キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
ぽかぽか暖かい。じんじん熱い。ドキドキ痛い。
初恋に耳をすませば、そんな音たちが聞こえてくるのだ。
純粋に離れたくない。ここを。隼人くんの近くから。
ああ、もう本当に。
なぜ生きることは常にこんなにも苦しいのだろうね。
常に押し寄せてくる痛み、苦しみに、うまく付き合っていくことが"生きる"ということなのかな……。
***
カレーを食べたあとは違う階の人たちに手品を見せて、病院を後にした。
行きの電車では私が寝てしまったのだけど、帰りでは隼人くんが寝てしまっていた。
睫毛が長く、無防備にすこしだけ空いた口がなんとも愛らしくて、微笑ましい気持ちで見てしまった。
途中私の肩にもたれてきた隼人くんの身体に緊張して、寝心地は悪くないかと心配で身動きが取れなくなった。
そして、だんだん帰るべき田舎の風景に移ろいでいくほど、電車の中からまたひとり、またひとりと人がいなくなっていった。
耳元で聞こえる吐息が、くすぐったい。
今日はたくさん頑張ったから、疲れちゃったんだよね。
でも、かっこよかったよ。
たくさんの人の笑顔をつくっていた。
──プシュー。
プルトップを持ち上げた音の上位交換のような音。降りるべき駅のひとつまえの駅に電車が停車した。
時刻は午後七時前。日は沈み、夜になっていた。
大粒の星が輝き、月が丸く堂々と暗闇のなかに出没している。
起こすのも忍びないけれど、起こさないと、私には彼を抱えて帰れるチカラはない。
「隼人くん……隼人くん」
「んっ、んんっ?」
「起きて、もうすぐ着くよ」