キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
寝ぼけているのか、可愛らしい掠れたような声が漏れる。
ダメダメ、負けちゃ……。
「隼人くん?」
「……ごめん、起きるよ」
「ごめんね」
むくっと起き上がる彼。ふとこちらを見た隼人くんの顔がすごく眠そうで、……脇腹をくすぐられた。
そしたら、隼人くんが私の頭を撫でて「なんで謝るの?起こしてくれてありがとう」と、ふんわりと笑った。
独特の間。彼特有の、朗らかな雰囲気にのまれる。
頭のてっぺんから離れた大きな手は、彼の大きな欠伸を隠すように口元にいった。
無人駅に降り立つと、草や土のいい匂いに安心感を得る。
どちらかというと私の故郷は今までいた都会のほう。なのにこちらの田舎が落ち着くのは、やっぱり日本人だからなのだろうか。
「ゆり、家まで送るよ」
「い、いいよ!ひとりで帰れるし……っ」
「だーめ。女の子ひとりじゃ危ないよ。……手でも繋ぐ?」
「……っ⁉︎」
お茶目に笑う彼。
おちょくられたのか、本気なのか微妙なライン。
繋ぎたいけれど、それを告げたら引かれそうで怖くてとても言えない。……でも、繋ぎたい。言え、ない。
「……ゆり?」
優しい声。名前を呼ばれて顔をあげる。
「ほら」
差し出されたのは、手。
私は深く考えきる前に、その手に自分の手を伸ばした。
手を重ねるのは、屋上で助けてもらったとき以来。
自分じゃない男の子の手のひら。ぬくもり、感触。愛しい。ドキドキする。気持ちが溢れてくる。