キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。


頭が真っ白になって、うまく思考回路が働いてくれない。


……ただ。

たくさんの感情が溢れてくるのだ。


言葉じゃ表せない。明るい色、重なって、新しい色に変わっていく。色と色の境目も、グラデーションになって美しく。


目に見えない心の中のキャンパスが、染められていく。
もともとの私の色に、君の施すデザインで、君色が。



「あ、……蛍!」



口をついて出た台詞。
目の前を小さな光が消えては現れ、揺蕩うように飛んでいた。



「ほんとだ。この季節に飛んでるなんて」

「二匹いるよ!ほら!」



暗闇の中で寄り添うように、そして離れて追いかけるように、光を放って二匹で飛ぶ蛍たち。
立ち止まって見とれていると、隼人くんの手に力が入ったことがわかった。


横目で隼人くんのことを見る。真っ直ぐ前だけを向いて、真剣な表情。なにを考えているのかはわからない。


どうして手を繋いでくれたのか疑問に思う。


ただ隼人くんが優しいだけだと言われれば納得できる。田舎の、視界の開けた道で、迷子の心配をしてくれているのかもしれない。けれど、それとは違うところに理由を探してしまう。あればいいとすら、願いに近いカタチで思っている。


言葉にしたい。どうして?って。そうしたら、隼人くんは答えてくれるのかな?

好きって私が言ったら、困るかな。どんな反応するのかな。ちょっとした好奇心がわく。そんな勇気なんてないくせに。



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