キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
生きて、生きて、生きて


次の日の朝、目覚ましが鳴る前に目覚めてしまった。月曜日。私がこの田舎に飛ばされて六日目の朝。


カーテンを開けて、朝の眩しい光に目が眩んだ。だけどそれにも慣れて瞼をまばたきさせると、両手を天井に突き上げて伸びをした。


朗らかな朝だ。充実した気持ちで眠りについて、こんなに穏やかな気持ちで目覚めたのはいつぶりだろう?


まだ、耳に残っている。隼人くんの「好きだ」という台詞、声、表情。目を瞑って鼻から息を吸うと、いっきに昨日の夜に巻き戻る。


空気感や、鼓膜を揺らしていた僅かな振動さえ、リアルに覚えている。


顔を洗って、髪の毛をクシでとかして、制服を着た。背中の数字は四十三になっていた。


一週間にも満たない期間でふたりともが恋に落ちた。そして、繋がった。そんなって奇跡ある?


心が重くない。とても軽い。水をふくんでいたスポンジのように重かったはず。だけど今はしぼりたてのように軽いのだ。


ただ、幸せがつまっている。嬉しさと、喜びと、たくさんのプラスな感情。

こんなの、初めて。



「行って来ます」



家を出た。
真っ直ぐ前を向いて歩くだけでも、空が広がっている。背の高い建物がないから、拓けているのだ。


そういえば私、地面ばかり見て歩いていたのに、ここに来てからというもの、前を見てちゃんと歩いている。


私自身、ここにきて変わってきたのかな……。



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