キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。
安心する。心臓の音が聴こえる。温もりが心地いい。
「……寝れる」
「立ったまま?」
「うん」
「ふはっ、それはすげぇな」
背中を撫でられる。よしよしと、頭の上で手が跳ねた。
そのあとは座って隼人くんの手品を見た。今日は次から次にコインが消えていく。と、思ったらあらぬところからコインが出現した。
私の背中だったり、髪の毛の中からだったり、右手かと思えば左手だったり。
綺麗な手が魔法をかけている。その仕組みを必死に見破ろうと、素人が奮闘したところでなにもできやしない。いとも簡単にやってみせるのに。
「そろそろ戻ろっか」
「うん」
立ち上がってスカートが汚れていないかと、裾を何度がはらう。
そして屋上を後にしようと扉に手を伸ばしたとき。
「あ、待ってゆり」
「えっ?」
振り返った瞬間、不意打ちのキス。額に、だけど。短いリップ音。
固まって動けなくなる私に「ご馳走さま」と隼人くんが笑う。
も、もう、この人のペースにはついていけません……。
***
その日の帰りのホームルームでのこと。先生が「今日は来月行われる文化祭での出し物を決めます。決まるまで帰れません」と宣言した。
文化祭……?
「じゃあまずは文化祭の実行委員を男女ひとりずつ選出します。そのあとはそのふたりに任せるから」