キミの生きる世界が、優しいヒカリで溢れますように。


先生が話を切り上げたあとすぐ、クラスメイトから男女ひとりずつ実行委員が選ばれた。ふたりとも立候補してくれたので、スムーズにことが運ぶ。


そのふたりが教卓の前に立ち、司会進行を務めて話が進む。


クラスで運営するお店は焼きそばとたこ焼き屋さんを合体させたものに決定した。みんな、簡単そうという安易な決断のもとで決まった。



「じゃあ次は後夜祭のことですが……」



そして後夜祭での出し物の話になった。
このクラスにはバンドを結成している人も、ダンスの才に秀でている人もいないみたいだった。白けた雰囲気のなか、なにをするかとみんなが頭を悩ませている。


と、その時だった。



「ねぇー、僕、マジックショーしてもいい?」



手をあげて、発言したのは隼人くんだった。
みんなが忘れていたというように「ああ!いいなそれ!」と、いっきに盛り上がる。


あれよあれよと、後夜祭での出し物が隼人くんを中心としたマジックショーに決まった。


そして私は、気づく。


あの日、私が飛び降りた日。日本中がひとつのニュースで持ちきりになっていたこと。
どのチャンネルに切り替えても、しきりに同じニュースが繰り返されていた。


死ぬことを決意していた私は、その報道を「死ぬから、関係ない」と、「いずれ風化して忘れ去られる」と、冷めた心で見ていた。


だけど……今は違う。


どんどん血の気が引いていき、指先が冷えていく。まだ、夏が幕を閉じようとしている秋の入り口前なのに。


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