Hold me 副社長の瞳と彼女の嘘
緊張からか、友梨佳はいつも以上に飲むペースが速いと気づいた時には、すでに遅かった。

敬語も忘れ、友梨佳は始をジッと見た。
「ねえ、本当にどうにもならないの?」
バシバシと始の肩を叩きながら、睨みつける友梨佳に始は大きく息を吐くと、

「お前飲みすぎ。俺だってどうにかしたいんだよ。俺だって……」
始の悲しそうな苦しそうな表情を見て、友梨佳もキュッと胸が締め付けられるような気持になり、あえて明るく始に声を掛けた。

「館長は社長が好きなんですね~。そう言えば麻耶がふたりが怪しいとか言ってた……まさか……」
そこまで話したところで、頭をベシッと叩かれ、友梨佳は「いたいです……」そう言って頭を手でさすった。

「バカな事言ってるなよ。本当に水崎といい……何を言ってるんだよ」
グイッとウイスキーを煽った始に、
「だって、館長めちゃモテるのに、女の噂も影もないって聞いたし……やっぱり……」
怪訝な表情をした友梨佳に、

「俺はノーマルだ……試してみるか?」
始の奇麗な唇が弧を描いたな……とぼんやりと友梨佳が思ったと同時に、ふわりと唇が温かくなった。

(えっ?……あれ?……今……?なに?)


「ふっ。顔真っ赤だぞ」

「え?今の……なに?」

「俺が女が好きって言う証拠」
サラッと何事も無かったようにいう始を唖然として見た。

「ちょ……と……ふざけないでください!!女が好きって……」
支離滅裂な言葉を繰り返す友梨佳に、「ハイハイ」と始はあしらうように言うと友梨佳の髪を撫でた。




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