Hold me 副社長の瞳と彼女の嘘
「うちの父親が女癖がすごく悪くて……母はいつも泣いてて。いつしか愛なんて絶対ない。結婚なんていいことないって子供ながらに思ってました。そんな幼少時代を送ってきたから、人を好きになるって事がわからないんですよ。真面目に付き合っても、相手が思ってくれるほど私はその人を愛せないし、どこか冷めてる自分がいて。なによりその先に結婚もないし、私なんかと真剣に交際する人が可哀そうじゃないですか。こんな私じゃ申し訳ないじゃないです。発展も愛情もない恋愛しかできないんです私。というか恋愛じゃないですね。だからずっと一人でいいんです」
一気に話をして、息をつくと、友梨佳は大きく息を吐いた。
そんな陰を落とした友梨佳の瞳を見て始は「そうか」とだけ言うとしばらくの沈黙が襲った。

しばらくして、
「それより館長こそどうして特定の彼女作らないんですか?会社中の噂ですよ。二人してフリーだから付き合ってるなんて噂になるんですよ?」
暗くなった雰囲気を明るくするように、フフッっと笑いながら言った友梨佳に、始は怪訝な表情をした。

「こないだも思ったけど、なんでみんなそうなるんだ?」

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