Hold me 副社長の瞳と彼女の嘘
恐る恐る友梨佳は扉の前に立ち、ベルを押した。

しばらくして、小さな物音とともに扉が開き、いつも通りの始が顔を出した。
「おつかれ」
不意に言われたねぎらいの言葉に、友梨佳は驚いて始を見た。
「どうした?入れよ」
これから始まることに緊張と、とまどいで落ち着かない友梨佳をよそに始はいたって余裕の表情を浮かべているように見えた。
「はい」

ゆっくりと部屋に足を踏み入れると、広い廊下があり、高級マンションのような玄関が広がり慌てて始の後ろに続いた。
目の前の扉を入ると、目の前に広がる大きな窓から見える東京の夜景に、一瞬で目を奪われた。

「すごい……キレイ」

呟くように言った友梨佳に、

「いいだろ?たまにはこういう雰囲気も。昨日から疲れただろうし」
友梨佳の真横にたち、夜景に目を向けた始の横顔を友梨佳はこっそり盗み見た。
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