Hold me 副社長の瞳と彼女の嘘
次々と運ばれて来る、綺麗な前菜や料理を前に、友梨佳は啞然として始を見た。

(こんな高級な所で、こんなにたくさんの料理って……いったいいくら?)
自分の財布の中身を思い出して、友梨佳は青くなった。

「ねえ、始?ただの契約にこんな高級なところなんて……」
友梨佳の言葉の意味が分かったのだろう始は、
「友梨佳はそんな心配はしなくていい。俺のしたいようにするって言っただろ?お前は俺に付き合えばいいんだよ」
「でも……それとこれとは……」
まだ渋る友梨佳に、始は運ばれてきた料理を友梨佳にサーブしながら、呆れたように声を上げた。
「俺はそんな契約は望んでない。楽しく過ごして、ストレスを発散したいんだよ。そんな場末の情事みたいなことをするつもりはない」
はっきりと言われ、またこの貴公子がラブホに行く姿も想像することができず、友梨佳は軽く息を吐いた後、
「わかった」
「お前って本当に……普通の女なら喜んでついてくるぞ」

(他の女と一緒にしないでよ!)
そこまで思って、友梨佳はイラっとした自分に驚いた。

(別に私が特別じゃないんだし、気にすることないじゃない。お互いただのストレスの発散のはずでしょ)

友梨佳は冷静を装うと、お皿に盛られた綺麗なサーモンを口に入れた。
「おいしい」
つい、言葉がもれ笑顔になった友梨佳に、始は微笑んで友梨佳の髪にキスを落とした。

(本当に、海外の王子様みたいだよ……)

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