Hold me 副社長の瞳と彼女の嘘
そのまま友梨佳の腰に手を回した始に、否応なしにこれから行われることを考えて、友梨佳は急に怖気づいてしまう。

(こんな手慣れた人の相手が私につとまる?私でいいの?)

そんな不安を感じ取ったのか、始はクスリと笑うと、友梨佳を見た。

「どうした?急に体が固まったけど」
腰元を少し撫でるように触られ、友梨佳の心臓は早鐘のようになった。

(やっぱり無理!こんな契約!無理無理!)

「館長!やっぱり……」
そこまで言葉を発したところで、チュッとリップ音を立ててキスをされ、言おうとした言葉を友梨佳は失った。

「その先は聞かない。早く食べろよ」
目の前に運ばれてきた魚料理を指さし、腰に回していた手を離すと始は自分も料理に手を付けた。
友梨佳はもう飲むしかないと覚悟を決めて、シャンパンに手を伸ばすと一気にグラスを空にした。

そんな友梨佳の様子に、始は笑みをもらすと友梨佳のグラスにシャンパンを注いだ。

「そうだ。友梨佳。もっと飲め。自分を解放しろ」
始の言葉がゆっくりと友梨佳に浸透し、少し酔いが回って、思考回路が麻痺していくのを感じながら、友梨佳は料理とお酒を堪能した。


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