Hold me 副社長の瞳と彼女の嘘
(あれ……何時？)

ぼんやりとした意識の中、友梨佳は目を開くと目の前の奇麗な顔に驚いて息を飲んだ。
何とか声をださず始を起こさなかったことに安堵し、しばらく気持ちよさそな寝息をたてる始を見つめた。

（本当にキレイ……それに……）

まだ余韻の残る体にさっきまでの始を思い出して、友梨佳は赤面した。

（ただの契約の関係なのに……こんなに優しくしないでよ……）

レストランから始まり、最高級の部屋。そして……。

（まるで愛されてると勘違いしそうなほど、優しかった……）

激しさの中にも、友梨佳に触れる唇も手も表情もすべてに気持ちを感じてしまいそうだった。

（本当の彼女にはもっともっといつもと違う顔を見せるの？）

眠る始に心の中で問いかけながら、友梨佳は小さくため息をついた。

時計に目を向けると、始発が走り出した時間だった。

（このままこの人の腕の中にいると、何か誤解をしてしまう）

友梨佳は急に今の感情が怖くなり、そっとベッドから出ると部屋を後にした。

小走りでホテルを出ると、少し明るくなった朝焼けの空を見上げた。

（どうしてこうなった？）

後悔なのか、何のなのかわからない自分の感情を持て余しながらゆっくりと歩き出した。

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