Hold me 副社長の瞳と彼女の嘘
ベストウェディング株式会社は前社長である、宮田芳也が若くして立ち上げたブライダル会社で、全国に何店舗もゲストハウスがあり、今最も国内で大きいブライダル会社だ。
前社長が家の都合で社長職を退任した後、社長の友人でもあり開業当時からこの会社に尽力していた村瀬始が副社長に就任した。

前副社長が社長職に就いているが、主に経営面を見る社長に対し、始は現場上がりという事もあり、実際の運営や新しい店舗展開などは副社長である始がすべて取り仕切っている。

冷静沈着で声を荒げた所も、慌てた所も見たことが無く、いつも真っすぐに前を向いて静かに敬語で指示を出す副社長に、こっそりと店舗のスタッフがつけたあだ名が「氷の貴公子」。

『恐れ多くて声なんて掛けられないけど、遠くから見るだけで眼福でしょ?あの綺麗な顔をみれるだけで』
同僚のその言葉に友梨佳も納得したことを思い出した。

「氷の貴公子」なんて言葉を初めて聞いた時、友梨佳はそのネーミングに啞然としたが、たまに遠くから見る始は確かに貴公子という言葉がぴったりで、笑う事なんてあるのだろうか?そう思うほど始は常に冷静な人間に見えた。

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