Hold me 副社長の瞳と彼女の嘘
「友梨佳、行きましょうか?」
食事も終わり、母の言葉に友梨佳は首を振った。

「化粧室に寄ってからいくから、先に二人で帰って。今日はごちそうさまでいいんでしょ」
笑顔を向けた友梨佳に、
「もちろんよ。また家にも帰ってらっしゃいよ」
そんな母の言葉に、
「いいわよ。新婚の邪魔なんてしないわよ」
「友梨佳!」
恥ずかしそうに頬を赤らめた母を見て、友梨佳も笑みを浮かべた。
「次は友梨佳の結婚報告が聞けるとお母さん嬉しいわ」
その言葉に、友梨佳の心が凍り付くような気がした。

(何を言ってるの?ずっと結婚はしないって私言ったじゃない)

「そうだね」
なんとかそれだけを言うと、友梨佳は母と近藤に手を振った。

二人の姿を見送ると、友梨佳はスッと表情をなくして、ただ呆然とその場に座っていた。
ウエイトレスが水をそっと入れてくれたのも気づかずぼんやりと、今あった母を思い出した。

(あれは本当にお母さん?あんなお母さんは知らない……)

どうにも行き場のない自分の気持ちをどうすることもできず、友梨佳は無意識に携帯を操作していた。

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