Hold me 副社長の瞳と彼女の嘘
始は初めて朝まで隣にいる友梨佳の寝顔をじっと見つめた。
いつも事が終わると、すぐに帰る友梨佳が気に入らなくて、どうしても腕に閉じ込めたくて。
一言『帰るな』その言葉が言いたいがいう訳にはいかない。
その為、明日が休みな事をいいことに始は友梨佳を抱き潰した。

腕の中で意識を失うように眠った友梨佳をぎゅっと抱きしめると、やわらかい髪に口づけ、そっと始も瞳を閉じた。

始めて会った日から惹かれていたのかもしれない。ふざけてキスをしたあの日から、会うたびに惹かれた。意地っ張りで、他人の幸せを真剣に願うのに、自分の幸せを放棄して自分を傷めつける友梨佳をほかっておけなくて。ふざけたように誘ってからもう半年近くたつ。
こんな関係でもなければ、友梨佳は始を受け入れない事を、始が一番理解していた。

とりあえずルールに自分以外の男と関係を持つことは禁止したのも、もしも他の男が友梨佳に触れることがあればすぐにこの気持ちが決壊して友梨佳に自分の気持ちをぶちまけそうだった。
しかし、ここ1か月。友梨佳の言動はあきらかにおかしく、始を避けているように思えてならなかった。

うまく眠る事ができず、ゆっくりと瞳を開けると、友梨佳の瞳に涙が滲んでいることに気づいて、始はそっと瞳から零れそうな雫を指ですくった。
母の事があって以来、確実に友梨佳の中で、何かが変わってきていることに始は自信があった。

「あともう少し……」
呟くように言った後、また流れた涙に始は唇で触れた。

「友梨佳……俺を……俺を信じろ。俺はお前を裏切らない……」
そう言うと、始は友梨佳をギュッと抱きしめた。


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