Hold me 副社長の瞳と彼女の嘘
友梨佳はぼんやりと瞳を開けると、まっすぐに友梨佳を見つめる始の瞳が目の前にあった。
「おはよう」
その言葉と、瞳に驚いて友梨佳は後ずさりそうになった。
そんな友梨佳をギュッと抱きしめると、
「たまにはいいだろ?少しぐらい余韻を楽しんだって」
軽く言われた始の言葉に、友梨佳は諦めたようにため息をついた。

「眠っちゃったんだ……」
「そうだな」
「ルール破っちゃった」
「なんだよそれ。勝手に友梨佳が決めただけだろ?」
その始の言葉に友梨佳は言葉に詰まった。


「なあ、友梨佳。今日はいい天気だよ。どこか行こうか」
友梨佳を抱きしめながら、優しく髪を撫でながら言われたその言葉に、友梨佳は驚いて始を見上げた。
「え?」
「たまにはいいだろ?海でも見に行こうか」
「でも……」
躊躇する友梨佳に、追い打ちをかけるように、
「決めた。ほらシャワー浴びて来いよ」
優しく微笑まれそっと落とされたキスに、なぜか泣きそうな気持ちになり、友梨佳は慌ててバスルームへと飛び込んだ。

(だから嫌だったのに。一緒に朝を迎えるの……幸せを……幸せを感じちゃうじゃない……)

友梨佳は流れる涙を隠すように、頭からシャワーを浴びると声を殺して泣いた。

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