Hold me 副社長の瞳と彼女の嘘
幾分落ち着いて、友梨佳はシャワーを止めるとバスローブを羽織りバスルームを出た。

「友梨佳。おいで」
優しく呼ばれて、友梨佳は諦めたように始に微笑み返した。
「おいしそう」
テーブルに並べられた朝食を友梨佳は見た。
美味しそうなサラダに、オムレツ、スープにクロワッサン。
一流ホテルの朝食はどれもとても美味しそうだった。
「昨日俺のせいでルームサービス食べれなかったもんな」
ニヤリと笑って言った始を友梨佳は睨みつけると、
「本当だよ」
そう言ってテーブルについた。

「食べよ」
始の言葉に、友梨佳も「いただきます」と手を合わせると、オレンジジュースのコップに口を付けた。
甘酸っぱくフレッシュなジュースが口の中に広がり、今まで複雑だった気持ちは少し落ち着いたような気がした。

「このクロワッサンも美味しいって話だぞ」
「え?いつも食べてないの?」
いつも泊っている始ならば当然食べているのだろうと思った友梨佳の言葉に、

「友梨佳がいないのに食べても仕方がないだろ」
当たり前のように言った始の言葉に、友梨佳の心はズキンと痛んだ。


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