Hold me 副社長の瞳と彼女の嘘
「まだ俺を信じられない?」
「え……?」
真面目に向けられた始の言葉と瞳に、友梨佳は驚いて目を見開いた。

「本当に、ただの契約でお前とこうしてきたって本当に思ってるのか?」
冷たく響いたその言葉に、
「な……なにを……言ってるの?」
何とか発した声が、自分でも震えているのがわかった。

「俺がただのストレス発散で、お前とこうしてきたと本当に思ってるのか?俺のことまだ信用できない?」
表情なく、淡々ときかれた始の問いに、友梨佳は何も答えることができなかった。
それでも射抜くような始の瞳から、目を逸らすことは許されない気がして、なんとか始を見つめ返した。

「俺は全身で友梨佳が好きだって伝えてきたつもりだった。言葉にすれば逃げ出されるのが解っていたから、遠回しに逃げられないように、大切にしてきたつもりだったけど……伝わらなかった?友梨佳は俺が嫌い?」

「私は……私は……誰も好きにならない……」
震える声で言った友梨佳の返事に、
「俺はずっと友梨佳が俺に心を許すまで、ゆっくりと時間をかけてきたつもりだったけど……これ以上もう無理か」
ため息とともに言葉を吐き出すように言った始の言葉に友梨佳の心は凍り付いた。

「もういいよ。今日で終わりにしよう」
最後に放たれたその言葉とともに、いつもとは逆に、始は手早く服を着ると振り返ることなく部屋をでて行った。

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