本当に大切なモノ
 大きな日本家屋の中は旅館のような趣があり、広い玄関の先にふすまがあった。
「さぁ、入って。」少女に促されて入った部屋に私たちは息をのんだ。
「ひろ・・高級旅館みたい。」
「そう?あ、もうそろそろで翡翠(ヒスイ)と紅玉(コウギョク)が来るからちょっと待ってて。」
「・・さっき、私たちの家へって言ってたな。他にもいるのか?」と、中央の机の所に座りながら七鬼君が聞いた。
「うん。あ、来たみたい。」少女がそう言った瞬間、ふすまが開き、和装姿の二人組が入ってきた。
「主、御帰りなさいませ。お茶をお持ちしました。」
「うん。ありがとう。」
「あ・・あの、その人達は?」私が戸惑いながら聞くと、少女は思い出したように言った。
「あぁ。紹介しないとね。右にいるのが翡翠、左にいるのが紅玉。翡翠は水の精で紅玉は火の精なんだ。」翡翠と呼ばれた方は、清水を連想させるような落ち着いた着物を身につけ、伸ばすと腰あたりまでありそうな淡い水色の髪を上で結わえている。瞳も澄んだ水色をしていた。一方、紅玉と呼ばれた方は燃え盛っている炎を連想させるような着物を身につけ、伸ばしても肩あたりまでほどしかない赤い髪をポニーテールでくくっている。瞳も、今にも燃えそうな赤色をしていた。そして、一見、男性に見えるが女性だ。
「「「えっ!?」」」
「本当にそんな奴らがいるんだな。」と、山下君が唖然としながら言った。すると、翡翠が大股で山下君の所へ詰め寄った。
「おい、人間。私たちをジロジロ見るな。特にお前、あー山・・なんだ?まぁ、いい。とにかく、口調には気をつけろ。」翡翠さんの外見からは信じられないような口調で話してきた。
「翡翠も十分、口が悪いとおもうけど・・」
「何だと?紅玉。」私は、ここであることに気付いた。
「翡翠さんと山下君って似てますよね。」
「「似てない!」」
(いや、似てるよ・・)
私は、ずっと口喧嘩をしている二人を見ていると、おかしくなり笑ってしまった。すると、七鬼君と紅玉さんもおかしいと思ったのか笑っており、あの少女も普通の女の子のように、笑っていた。
 その空間は、笑いに包まれていた。



< 3 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop