本当に大切なモノ
私は、ごく普通の共働きの両親のもとに産まれた。両親はとても優しくて、時には喧嘩もしたが幸せだった。だけが、その幸せは長くは続かなかった。
中学二年生のある日。この日から一週間のゴールデンウィークがあり、私はお父さんとお母さんと三人で旅行に行くこととなった。目的地までは車で約4時間。家族皆でおしゃべりをしていたその時だった。ちらっとみたバックミラーに、暴走してこちらに突っ込んでくるトラックがうつっていた。
私が、目を覚まして真っ先に見たものは白い天井だった。顔を横に向けると、点滴や医療器具。ぼんやりとした頭で考えた。
(ここは…病院……?なんで……あ、そうだ…旅行……車で…)そこまで考えてようやく思い出した。旅行中に、暴走したトラックが後ろから衝突したことを。そして、この場にお父さんとお母さんがいないことを。
私は、衝動的に走り出した。ベッドを飛び降り、扉を開け、点滴が腕から抜けて倒れたことにも、体中が悲鳴をあげていることにも、看護師さんのお姉さんが追いかけていることにも気付かないまま。
私は、滑り込むように受付に身を乗り出した。
「っああの!私のお父さんとお母さんはどこにいますか!?」
「え、えっと・・・」
受付の女の人が困っていると、私を追いかけてきてくれた看護師のお姉さんが、私の肩にそっと手を置いた。
「神谷(カミヤ)花音(カノン)ちゃんだよね?花音ちゃんの両親のことは、渡辺先生が知っているはずだから、落ち着いたら一緒に行こ?ね?」
「・・はい。」
あの後、私は看護師のお姉さんと病室に戻り、点滴を付け直してもらった。
「よし、できた。花音ちゃんが今の状態で出歩いたら倒れかねないから、渡辺先生を呼んでくるね。」
看護師のお姉さんが病室を出て行ってから約10分後、40代前半ぐらいの男性医師がやってきた。
「はじめまして、渡辺です。花音ちゃんは、奇跡的に致命傷を受けていなかったんだけど・・花音ちゃんのご両親は・・・ほぼ即死の状態で、救うことができませんでした。申し訳ありませんっ」
渡辺先生と看護師のお姉さんは、頭を下げた。
(あぁ・・なんとなく、分かっていたけど・・いやだなぁ・・・)
私は、その後、泣きつかれるまで泣いた。その場には、渡辺先生と看護師のおねいさんがずっといてくれた。
私は、あれから二週間後に退院した。その際、お父さんとお母さんの両方の祖父母がが来てくれた。
「今まで、ありがとうございました。」
私が、渡辺先生や看護師のお姉さんに挨拶をすると、少し目を潤ませながら見送ってくれた。
私は、退院してからは自分の住んでいた家から一番近かった、お父さんの方の祖父母の家にお世話になった。祖父母も、学校の皆も、ご近所さんも、みんな優しくしてくれたが、やっぱり寂しかった。
複雑な思いを抱えたまま、中学二年生を終えようとしていた頃。いつも通り学校から帰ると、リビングにある机の椅子に座りながら、お茶を飲んでいる和装姿の男性がいた。その男性は、硬直している私に気づくと、こちらを見た。その男性は、無表情だが整った顔をしており、二十代と聞いても納得できるが、五十代と聞いても納得できるような不思議な顔立ちをしていた。そして、真っ白で綺麗な長髪を緩く結い上げていた。
「初めまして。私は、朔波(サクハ)神社の全知全能の神、知神(チジン)と申します。」
「・・・・はあ!?」
中学二年生のある日。この日から一週間のゴールデンウィークがあり、私はお父さんとお母さんと三人で旅行に行くこととなった。目的地までは車で約4時間。家族皆でおしゃべりをしていたその時だった。ちらっとみたバックミラーに、暴走してこちらに突っ込んでくるトラックがうつっていた。
私が、目を覚まして真っ先に見たものは白い天井だった。顔を横に向けると、点滴や医療器具。ぼんやりとした頭で考えた。
(ここは…病院……?なんで……あ、そうだ…旅行……車で…)そこまで考えてようやく思い出した。旅行中に、暴走したトラックが後ろから衝突したことを。そして、この場にお父さんとお母さんがいないことを。
私は、衝動的に走り出した。ベッドを飛び降り、扉を開け、点滴が腕から抜けて倒れたことにも、体中が悲鳴をあげていることにも、看護師さんのお姉さんが追いかけていることにも気付かないまま。
私は、滑り込むように受付に身を乗り出した。
「っああの!私のお父さんとお母さんはどこにいますか!?」
「え、えっと・・・」
受付の女の人が困っていると、私を追いかけてきてくれた看護師のお姉さんが、私の肩にそっと手を置いた。
「神谷(カミヤ)花音(カノン)ちゃんだよね?花音ちゃんの両親のことは、渡辺先生が知っているはずだから、落ち着いたら一緒に行こ?ね?」
「・・はい。」
あの後、私は看護師のお姉さんと病室に戻り、点滴を付け直してもらった。
「よし、できた。花音ちゃんが今の状態で出歩いたら倒れかねないから、渡辺先生を呼んでくるね。」
看護師のお姉さんが病室を出て行ってから約10分後、40代前半ぐらいの男性医師がやってきた。
「はじめまして、渡辺です。花音ちゃんは、奇跡的に致命傷を受けていなかったんだけど・・花音ちゃんのご両親は・・・ほぼ即死の状態で、救うことができませんでした。申し訳ありませんっ」
渡辺先生と看護師のお姉さんは、頭を下げた。
(あぁ・・なんとなく、分かっていたけど・・いやだなぁ・・・)
私は、その後、泣きつかれるまで泣いた。その場には、渡辺先生と看護師のおねいさんがずっといてくれた。
私は、あれから二週間後に退院した。その際、お父さんとお母さんの両方の祖父母がが来てくれた。
「今まで、ありがとうございました。」
私が、渡辺先生や看護師のお姉さんに挨拶をすると、少し目を潤ませながら見送ってくれた。
私は、退院してからは自分の住んでいた家から一番近かった、お父さんの方の祖父母の家にお世話になった。祖父母も、学校の皆も、ご近所さんも、みんな優しくしてくれたが、やっぱり寂しかった。
複雑な思いを抱えたまま、中学二年生を終えようとしていた頃。いつも通り学校から帰ると、リビングにある机の椅子に座りながら、お茶を飲んでいる和装姿の男性がいた。その男性は、硬直している私に気づくと、こちらを見た。その男性は、無表情だが整った顔をしており、二十代と聞いても納得できるが、五十代と聞いても納得できるような不思議な顔立ちをしていた。そして、真っ白で綺麗な長髪を緩く結い上げていた。
「初めまして。私は、朔波(サクハ)神社の全知全能の神、知神(チジン)と申します。」
「・・・・はあ!?」