本当に大切なモノ
「え、えっと・・」
「驚かせてしまい申し訳ありません。今日は、神谷殿にお話があってまいりました。」
「はぁ・・そう、なんですか。」
私は、まったく話の整理が追いつかなかった。
その不思議な男性の表情は一切崩れていない。身に付けている着物は、この世のものとは思えないほど真っ白だ。
「では、早速ですが、私と一緒に来ていただけませんか?御時間は、取らせませんので。」
「え、いや・・何者かも分からない人になんて。」
「そうですか。」
少しほっとした瞬間、
「では、ここで話しましょう。」と、平然と言ってきた。
「はあ!?」
(この人、バカか!?)
「私は、あなたに話があって来たのです。」
(いや、何、普通に話してるの!?)
心の中がツッコミに忙しい中、受けた説明はこうだ。
 知神様のもとで、お手伝いとして悪霊払いをしないか、ということだった。
「と、言っても信じてもらえませんか?」
「あ、当たり前です。そもそも、神様なんてものがいたら、私みたいな人間はいないはずです・・」
静かになった。私は、何か地雷を踏んでしまったのかと思い、恐る恐る知神様を見た。
「成る程。ならば、こちらの世界においでなさい。我々神は、すぐには死にません。」
「え?」
思考が揺れた。
「もう、悲しむ必要はありません。私が、約束しましょう。」
知神様は、畳み掛けるように話してきた。
「っでも、証拠がないじゃないですか。」
「証拠・・私が、神であることの証拠ですか?」
「そうです。」
知神様は、少し考えると、私に右手を差し出した。
「それでは、私の右手に触れてみなさい。」
私は、恐る恐る触れた。すると、謎の浮遊感に襲われた。
「え?うわあ!?」
そこは、私たちがいたはずの家の上空だった。
「これで、信じていただけましたか?あ、手を離してしまうと落ちますよ。」
「ひいっ!し、信じました!信じましたからぁっ!降ろして!」
「それは、よかった。」すると、また謎の浮遊感に襲われたかと思うと、元々いた場所に立っていた。
「なん、なんてことを…だめだ…酔った。」
知神様は、大丈夫ですかと聞いてくるが、大丈夫な訳がない。数分間、じっとしていると酔いがさめてきた。知神様はその頃を見計らって、また話し始めた。
「神谷殿がこの話を受けるか受けないかは、今から話すことを踏まえたうえで、熟慮してください。」
「はい。」
それは、衝撃的な事だった。
「神谷殿が人間では無くなったとき、この世から神谷殿野存在が消えます。」
「え?」
それは、14歳の少女には重すぎる事実だった。
 知神様は一週間後に返事を聞きに来ると言って、姿を消した。
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