本当に大切なモノ
「そのあとは、ここの空き地にこの空間を作った。翡翠と紅玉とは、知神様のもとで悪霊退治をしている間に出会ったの。何か、質問はある?」
まるで、異世界の話を聞いているようで、頭の整理が追いつかなかった。
「ええと、ちょっと整理させて。」
七鬼君も整理が追いつかなかったようだ。
「君の名前は神谷で、悪霊退治をしているんだよね。」
「そう。私は、神谷(カミヤ)花音(カノン)。51歳。」
「「「…ん?」」」
「ん?だから、神谷花音。51歳。」
「いやいやいやいや!ちょっと待て!51歳⁉」
山下君が驚きのあまりに立ち上がった。
「まじか…え、ど、どうなってんだ?」
「あ。そうか、そういうことか!」
七鬼君が思い付いたように言った。
「どういうことなの?」
「つまり、人間じゃなくなったときから、成長が極端に遅くなってるんだよ。」
「正解!だから、あんまり見た目が変わってないの。」
「なるほど…?」
山下君は、いまいち理解が追い付いてないようだ。
それに気づいてか、七鬼君が質問をした。
「分からないことばかりだから、質問があるんだけど。いいかな?え~と…神谷さん?」
「花音でいいよ。」
「いい?花音」
「もちろん!」
 
 
一、どうして、僕たちが悪霊退治の手伝いに選ばれたのか。

二、どうやって、悪霊退治をするのか。

三、どうして、今、僕たちが人ならざるものが見えるのか。

四、花音は元から人ならざるものが見えていたのか。

五、知神様は今、どうしているのか。

六、翡翠と紅玉の着ている着物はどうなっているのか。

七、この家はどうなっているのか。

最後の方は、七鬼君の個人的な疑問になっていたが、花音は全ての質問に答えてくれた。

一、今回の悪霊が一筋縄でいかそうにないため、妖力の高い七鬼くんの力を借りる   ように、と知神様がいったから

二、御札を使う。

三、花音たちの妖力に感化されているから。

四、見えていない。人間ではなくなった時から。

五、時々、こちらに来るが、主に朔波神社にいる

六、体の一部のようなもので、翡翠と紅玉の力に比例している。

七、部屋の個数、部屋の造り、部屋の位置などの全ては花音の思いのまま。

「七鬼くん、質問はこれでオーケー?」
「いや、もうひとつあるんだ。朔波神社って・・」
「そう。七鬼くんの実家だよ。」
それを聞いて、私たちは驚いた。
「知神様はね、ここに来た時は、絶対に七鬼くんの話を保護者のようにするんだよ。」
花音は少し、困ったように笑った。

 その後、私たちは花音に悪霊退治の説明を受けた。
「今回の悪霊は手強いから、二手に分かれるよ。見つけたらみんなであつまって、七鬼君たちは翡翠と紅玉と一緒に悪霊を囲むように円になる。あ、ちゃんと人差し指と中指で御札を挟むようにして持ってね。そこで、みんなで”急急如律令”(キュウキュウニョリツリョウ)って言うこと。そうしたら、私がとどめをさすから。」
「わかった。」
花音は一息ついて神妙な面持ちでまた話しはじめた。
「もう一回言うけど、これは遊びじゃないよ。後悔しない?」
私たちの考えは、すでに決まっている。
「「「もちろん!」」」
「そう。」花音は安心したように微笑んだ。
「私は、皆、怖気付いてるんじゃないかって思っていたから。」
「それは、正解だよ。私、怖いもん。」
苦笑いしながら言った。
「え?」
「でも、私たちは友達だからね!」
「友達?」
花音はぽかんとしている。
「うん。だよね?」
七鬼君と山下君に同意を求める。
「ああ。お前は意外といい奴そうだしな。」
山下君はそう言ってニカッと笑った。七鬼くんも頷いている。
「・・そっか。友達・・・か。」
花音はその言葉を噛みしめるように呟いた。
「嫌だった?」
「ううん。ただ、嬉しいだけ。久々に友達ができたから。」
その時見せた花音の笑顔は、可憐な花のように綺麗で優しい笑顔だった。
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