ハツコイ
*****
「はぁ、はぁ、はぁ…」
アイツに追いつかれないように、私は必死に走る。
もう心臓が口から出てしまいそうなほど、走って、走って、走って……
気が付けば、私は学校の保健室の前に居た。
当然、こんな時間に早番でもない瀬良先生は来てなくて…。
「ハハ…何やってるんだろう、私。こんなとこに来ても仕方ないのに…」
私は疲れ切って保健室の前にしゃがみ込む。
「痛…」
手首に鈍い痛みを感じ視線をやると、さっきアイツに掴まれた痕が青く残っていた。
ブルッと身体が震える。
どうしよう…
もう、あの家には居られない。
アイツがいる限り、私は怖くて家には帰れない。
「もう…嫌だ」
私は自分の身体を何かから守るように、ぎゅっと強く抱きしめた。
「何が嫌なんだ?」
…え………瀬良、先生?
突然、聞こえてきた優しい声に、私は目頭が熱くなるのをグッと堪える。
「べ、別に…」
まさか、こんな早くに瀬良先生が来ると思っていなかった私は、弱っている自分を見られてしまった事に酷く動揺して少し吃ってしまった。
「…へぇ。まぁ、いいけど。藤崎、時間あるだろ?ココア飲んでけ」
そう言ってニカッと笑った瀬良先生は、保健室のドアの鍵を開け中へ入って行く。
私は素直に瀬良先生の後について保健室へ入った。
「まぁ、その辺に座れよ」と言いながら、電気ケトルに水を入れている瀬良先生。
明らかにさっきの私は変だったのに、何も聞かないでいてくれる瀬良先生との空間は、なんだかホッとして心地がいい。
ポコポコと音と湯気を出している電気ケトル。
瀬良先生のサラサラの髪に寝ぐせ。
ふふ…可愛い///
キコキコと椅子を横に揺しながら、お湯が沸くのを待っている白衣姿の瀬良先生。
…瀬良先生って肩幅が広いんだなぁ。
なんてボーと瀬良先生を見ていたら、
「何見てんの?もしかして、俺に惚れちゃった?」
ニヤッと片方の口角だけ上げて笑いながら瀬良先生が言った。
「ーーっ///⁈バカじゃないですかっ?」
「あははっ、お前、年上に向かってバカとか言うなよ」
「本当のことを言っただけですっ///」
ダメだっ///瀬良先生といると調子が狂う。
本来の自分が出てしまうというか、なんか落ち着きを取り戻せないよっ。
「ぷはっ、可愛いなお前」
そう言って「よし、よし」と瀬良先生は私の頭を子供にする様に撫でた。
「ちょっ、やめっ///」
私は瀬良先生の手を退けようと、自分の頭に手をやる。
「…………なんだよ、これ?」
瀬良先生が私の手を握りしめ動きを止めた。
ーーーーーっ!
「やっ!離してっ‼︎」
瀬良先生の視線が私の手首にあることがわかり、慌てて瀬良先生の手を振り払う。
「ちゃんと説明しろよ。その手首の青アザは何だ?」
瀬良先生のとても真剣な顔に、肩がビクッとなる。
「…瀬良先生には、関係、ないです」
本当は助けて欲しいのに…
なぜか、言い出せなくて。
「関係あるだろ?俺に話してみろよ」
優しい瀬良先生の声に目頭が熱くなって涙が溜まる。
「…わ、たし「瀬良先生っ」」
突然、ガラッとドアが開いて、私の勇気を振り絞った声はいとも簡単に打ち消されてしまった。
「あら、お邪魔だったかしら?」
ドアを開け入ってきたのは英語の雨宮先生。
私に向けられた雨宮先生の視線は「あなたの方が邪魔」と言われているかのようだった。
「失礼します」
そう一言だけ言って、引き止める瀬良先生を無視し、私は逃げるように保健室を出て行った。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
アイツに追いつかれないように、私は必死に走る。
もう心臓が口から出てしまいそうなほど、走って、走って、走って……
気が付けば、私は学校の保健室の前に居た。
当然、こんな時間に早番でもない瀬良先生は来てなくて…。
「ハハ…何やってるんだろう、私。こんなとこに来ても仕方ないのに…」
私は疲れ切って保健室の前にしゃがみ込む。
「痛…」
手首に鈍い痛みを感じ視線をやると、さっきアイツに掴まれた痕が青く残っていた。
ブルッと身体が震える。
どうしよう…
もう、あの家には居られない。
アイツがいる限り、私は怖くて家には帰れない。
「もう…嫌だ」
私は自分の身体を何かから守るように、ぎゅっと強く抱きしめた。
「何が嫌なんだ?」
…え………瀬良、先生?
突然、聞こえてきた優しい声に、私は目頭が熱くなるのをグッと堪える。
「べ、別に…」
まさか、こんな早くに瀬良先生が来ると思っていなかった私は、弱っている自分を見られてしまった事に酷く動揺して少し吃ってしまった。
「…へぇ。まぁ、いいけど。藤崎、時間あるだろ?ココア飲んでけ」
そう言ってニカッと笑った瀬良先生は、保健室のドアの鍵を開け中へ入って行く。
私は素直に瀬良先生の後について保健室へ入った。
「まぁ、その辺に座れよ」と言いながら、電気ケトルに水を入れている瀬良先生。
明らかにさっきの私は変だったのに、何も聞かないでいてくれる瀬良先生との空間は、なんだかホッとして心地がいい。
ポコポコと音と湯気を出している電気ケトル。
瀬良先生のサラサラの髪に寝ぐせ。
ふふ…可愛い///
キコキコと椅子を横に揺しながら、お湯が沸くのを待っている白衣姿の瀬良先生。
…瀬良先生って肩幅が広いんだなぁ。
なんてボーと瀬良先生を見ていたら、
「何見てんの?もしかして、俺に惚れちゃった?」
ニヤッと片方の口角だけ上げて笑いながら瀬良先生が言った。
「ーーっ///⁈バカじゃないですかっ?」
「あははっ、お前、年上に向かってバカとか言うなよ」
「本当のことを言っただけですっ///」
ダメだっ///瀬良先生といると調子が狂う。
本来の自分が出てしまうというか、なんか落ち着きを取り戻せないよっ。
「ぷはっ、可愛いなお前」
そう言って「よし、よし」と瀬良先生は私の頭を子供にする様に撫でた。
「ちょっ、やめっ///」
私は瀬良先生の手を退けようと、自分の頭に手をやる。
「…………なんだよ、これ?」
瀬良先生が私の手を握りしめ動きを止めた。
ーーーーーっ!
「やっ!離してっ‼︎」
瀬良先生の視線が私の手首にあることがわかり、慌てて瀬良先生の手を振り払う。
「ちゃんと説明しろよ。その手首の青アザは何だ?」
瀬良先生のとても真剣な顔に、肩がビクッとなる。
「…瀬良先生には、関係、ないです」
本当は助けて欲しいのに…
なぜか、言い出せなくて。
「関係あるだろ?俺に話してみろよ」
優しい瀬良先生の声に目頭が熱くなって涙が溜まる。
「…わ、たし「瀬良先生っ」」
突然、ガラッとドアが開いて、私の勇気を振り絞った声はいとも簡単に打ち消されてしまった。
「あら、お邪魔だったかしら?」
ドアを開け入ってきたのは英語の雨宮先生。
私に向けられた雨宮先生の視線は「あなたの方が邪魔」と言われているかのようだった。
「失礼します」
そう一言だけ言って、引き止める瀬良先生を無視し、私は逃げるように保健室を出て行った。