ハツコイ
*****
夕食を食べ終わった私は、瀬良先生の家のキッチンで洗い物をしていた。
ママ、私が居なくなって心配してるかな?
…………ううん、私が家を出たことさえ気付いていないかも。
でも、私は本当にこのまま瀬良先生に甘えていていいのかな?
なんて考えていると、
「わりーな、後片付けさせて」
キッチンに入ってきた瀬良先生が、冷蔵庫からビールを取り出しながら言った。
「あ、の…瀬良先生」
「ん?」
「私、やっぱりネカフェに行きます」
「は?何言ってんの?お前の家は、今日からしばらくの間はココ。わかった?」
「いや、でも…」
「でももクソもねーの。俺が決めたんだから、これは決定事項なんだよ」
そう言って、瀬良先生はカシュ…とビールを開けて一口飲んだ。
「…強引だな///」
「それ、俺の特技だから」
ニカッと笑って私の髪をクシャクシャッとしてから、リュウさんの所へビールを持って行った。
…ホント、強引な人だな///
でも、、、嬉しい。
私はここに居ていいんだ。
正直、行く宛がなかった私はホッと胸を撫で下ろした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーー
「……寝てる?」
洗い物が終わり私がリビングに戻ると、ソファに瀬良先生がスースーと寝息をかきながら横たわっていた。
「呑んでる途中で、急に電池が切れてしまったようです」
リュウさんが瀬良先生の足元にジャケットを掛けながら言う。
「私のせいで疲れちゃったんですね…」
「それは違いますよ。雄大は貴方を守ることが出来て安心したんだと思います」
リュウさんが優しく微笑みながら言った。
「座ってお話ししませんか?」と言われて、私は瀬良先生を起こさないように静かに座る。
「雄大は口は悪いけど信用できる男ですよ。彼なりに貴方のことを助けようと必死になっています。難しいかも知れませんが、彼のこと頼ってあげて下さい」
リュウさんの言葉は、とても柔らかな口調のせいかスッと私の心に届く。
「…はい///」
「ありがとうございます。きっと、雄大は藤崎さんのことを救ってくれますよ」
「あの…、瀬良先生はどうして私の事を助けてくれたんですか?」
「雄大は先生ですからね」
「でも…普通だったら、ここまでしてくれないかと…。現に今までそんな先生に私は会ったことがありません」
「そうですね…。一言で言えば、恩師との約束ですかね」
「…どういう意味ですか?」
「また、直接本人に聞いてみて下さい」
リュウさんはニッコリと笑って交わした。
そりゃ、そうだよね。
友達のことを勝手に喋るなんて事、出来ないよね?
「…そうします」
「藤崎さんは、とても賢くて良い子ですね」
リュウさんは私の頭の上に、そっと手を乗せて言った。
「そ、そんな事ないですっ。リュ、リュウさんはっ女性慣れしてますよねっ///」
恥ずかしくて顔が熱いよっ。
「あはは、その反応、とても可愛いですね」
「からかわないで下さい///」
リュウさんは「あはは」と笑ってから、ビールを一口飲んだ。
「僕も藤崎さんに信用してもらいたいので、きちんと自己紹介させていただいても良いですか?」
「え?」
「後からバレるような事になりたくないので、今、僕からお話しさせて下さい」
少し困ったように眉を下げて笑ったリュウさん。
私は「…はい」と答えて、リュウさんの言葉を待った。
「実は、僕、神部組の三代目なんです。分かりやすく言えば、ヤクザですね」
………え?
こんな優しそうな人が、ヤクザ⁇
全然、そんな風に見えない。
リュウさんの突然の告白に、考えがまとまらず黙っていると
「やはり、ヤクザと知り合いだなんて嫌ですよね。遅い時間ですし、帰りますね」
リュウさんは、申し訳なさそうに笑いながら立ち上がった。
「待って下さいっ」
私は慌てて立ち上がって、リュウさんの腕を掴み引き止める。
「藤崎さん?」
リュウさんは少し驚いた顔で私を見た。
「リュウさんの事、全然嫌なんかじゃありませんっ。リュウさんは、とても友達想いの優しい人ですっ」
あんなに優しく微笑んだり、話してくれるリュウさんに嫌な気持ちなんて持つわけないよっ。
「ありがとうございます。藤崎さんは優しいですね」
「そ、そんなことっ無いです///」
「僕の場合は、怖がられるのが当たり前なので、藤崎さんの言葉はとても嬉しかったです。ありがとうございます」
そう言って優しく微笑んだリュウさんは、私の頬にそっとキスをした。
「☆☆☆っ⁈///」
「感謝の印です」とクスッと笑って帰っていった。
私は頬に手を当てて、力無く床にペタンと座る。
キ、キス…されちゃった///
やっぱり、リュウさんって女慣れしてるっ‼︎
フェロモンが半端ないしっ。
しかも、いい香りがするしっ。
「なにキスなんてされてるんだよ、バーカ」
ソファで寝ていたはずの瀬良先生が、ムクッと起きて私にデコピンをした。
「痛いじゃないですかっ」
「痛くしてるんだから当たり前だろ?」
「どうしてデコピンなんてするんですかっ」
「お前がバカだから」
「意味がわかりませんけどっ」
「俺が寝てる間に何やってんの?」
「瀬良先生が勝手に寝て、リュウさんが勝手にキッ…キスしたんじゃないですか///」
「ホントお前って危なっかしい奴だな」
「何がですかっ」
「わからないならいーよ」
全く意味がわからないんですけどっ!
納得がいかなくて、私がぷぅと頬を膨らませていると、
「…さんきゅ、な」
少し照れたように言った瀬良先生。
「え?」
「リュウの事…素性を知った上で、受け入れてくれて、ありがとう」
「べ、別にお礼を言われることなんて有りません。お礼なら私が瀬良先生に言わないと…」
私は正座をしてから、瀬良先生を真っ直ぐに見る。
「今日は助けてくれて、ありがとうございました」
「プハッ、素直なお前ってなんか調子が狂うな」
「なっ///せっかくお礼を言ったのに…」
な、なによ。
恥ずかしいけど、すごく感謝してるから素直にお礼を言ったのにさ。
「冗談だよ。お前が無事で本当に良かった」
瀬良先生が私の頭にそっと手を乗せて、優しく微笑んだ。
…トクンッ、トクンッ、トクンッと心臓が早くなっていく。
な、なにコレ///⁇
なんか急にドキドキしてきたっ。
リュウさんの時は、こんなにドキドキしなかったのに。
「…どうした?」
固まったまま動かない私を、心配そうな顔で覗き込んでくる瀬良先生。
こ、これ以上、近づかないでっ。
心臓がどうにかなっちゃいそうだよっ。
こんなの初めて…
どうしちゃったの?
私ーーーーーーーーー⁇
夕食を食べ終わった私は、瀬良先生の家のキッチンで洗い物をしていた。
ママ、私が居なくなって心配してるかな?
…………ううん、私が家を出たことさえ気付いていないかも。
でも、私は本当にこのまま瀬良先生に甘えていていいのかな?
なんて考えていると、
「わりーな、後片付けさせて」
キッチンに入ってきた瀬良先生が、冷蔵庫からビールを取り出しながら言った。
「あ、の…瀬良先生」
「ん?」
「私、やっぱりネカフェに行きます」
「は?何言ってんの?お前の家は、今日からしばらくの間はココ。わかった?」
「いや、でも…」
「でももクソもねーの。俺が決めたんだから、これは決定事項なんだよ」
そう言って、瀬良先生はカシュ…とビールを開けて一口飲んだ。
「…強引だな///」
「それ、俺の特技だから」
ニカッと笑って私の髪をクシャクシャッとしてから、リュウさんの所へビールを持って行った。
…ホント、強引な人だな///
でも、、、嬉しい。
私はここに居ていいんだ。
正直、行く宛がなかった私はホッと胸を撫で下ろした。
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「……寝てる?」
洗い物が終わり私がリビングに戻ると、ソファに瀬良先生がスースーと寝息をかきながら横たわっていた。
「呑んでる途中で、急に電池が切れてしまったようです」
リュウさんが瀬良先生の足元にジャケットを掛けながら言う。
「私のせいで疲れちゃったんですね…」
「それは違いますよ。雄大は貴方を守ることが出来て安心したんだと思います」
リュウさんが優しく微笑みながら言った。
「座ってお話ししませんか?」と言われて、私は瀬良先生を起こさないように静かに座る。
「雄大は口は悪いけど信用できる男ですよ。彼なりに貴方のことを助けようと必死になっています。難しいかも知れませんが、彼のこと頼ってあげて下さい」
リュウさんの言葉は、とても柔らかな口調のせいかスッと私の心に届く。
「…はい///」
「ありがとうございます。きっと、雄大は藤崎さんのことを救ってくれますよ」
「あの…、瀬良先生はどうして私の事を助けてくれたんですか?」
「雄大は先生ですからね」
「でも…普通だったら、ここまでしてくれないかと…。現に今までそんな先生に私は会ったことがありません」
「そうですね…。一言で言えば、恩師との約束ですかね」
「…どういう意味ですか?」
「また、直接本人に聞いてみて下さい」
リュウさんはニッコリと笑って交わした。
そりゃ、そうだよね。
友達のことを勝手に喋るなんて事、出来ないよね?
「…そうします」
「藤崎さんは、とても賢くて良い子ですね」
リュウさんは私の頭の上に、そっと手を乗せて言った。
「そ、そんな事ないですっ。リュ、リュウさんはっ女性慣れしてますよねっ///」
恥ずかしくて顔が熱いよっ。
「あはは、その反応、とても可愛いですね」
「からかわないで下さい///」
リュウさんは「あはは」と笑ってから、ビールを一口飲んだ。
「僕も藤崎さんに信用してもらいたいので、きちんと自己紹介させていただいても良いですか?」
「え?」
「後からバレるような事になりたくないので、今、僕からお話しさせて下さい」
少し困ったように眉を下げて笑ったリュウさん。
私は「…はい」と答えて、リュウさんの言葉を待った。
「実は、僕、神部組の三代目なんです。分かりやすく言えば、ヤクザですね」
………え?
こんな優しそうな人が、ヤクザ⁇
全然、そんな風に見えない。
リュウさんの突然の告白に、考えがまとまらず黙っていると
「やはり、ヤクザと知り合いだなんて嫌ですよね。遅い時間ですし、帰りますね」
リュウさんは、申し訳なさそうに笑いながら立ち上がった。
「待って下さいっ」
私は慌てて立ち上がって、リュウさんの腕を掴み引き止める。
「藤崎さん?」
リュウさんは少し驚いた顔で私を見た。
「リュウさんの事、全然嫌なんかじゃありませんっ。リュウさんは、とても友達想いの優しい人ですっ」
あんなに優しく微笑んだり、話してくれるリュウさんに嫌な気持ちなんて持つわけないよっ。
「ありがとうございます。藤崎さんは優しいですね」
「そ、そんなことっ無いです///」
「僕の場合は、怖がられるのが当たり前なので、藤崎さんの言葉はとても嬉しかったです。ありがとうございます」
そう言って優しく微笑んだリュウさんは、私の頬にそっとキスをした。
「☆☆☆っ⁈///」
「感謝の印です」とクスッと笑って帰っていった。
私は頬に手を当てて、力無く床にペタンと座る。
キ、キス…されちゃった///
やっぱり、リュウさんって女慣れしてるっ‼︎
フェロモンが半端ないしっ。
しかも、いい香りがするしっ。
「なにキスなんてされてるんだよ、バーカ」
ソファで寝ていたはずの瀬良先生が、ムクッと起きて私にデコピンをした。
「痛いじゃないですかっ」
「痛くしてるんだから当たり前だろ?」
「どうしてデコピンなんてするんですかっ」
「お前がバカだから」
「意味がわかりませんけどっ」
「俺が寝てる間に何やってんの?」
「瀬良先生が勝手に寝て、リュウさんが勝手にキッ…キスしたんじゃないですか///」
「ホントお前って危なっかしい奴だな」
「何がですかっ」
「わからないならいーよ」
全く意味がわからないんですけどっ!
納得がいかなくて、私がぷぅと頬を膨らませていると、
「…さんきゅ、な」
少し照れたように言った瀬良先生。
「え?」
「リュウの事…素性を知った上で、受け入れてくれて、ありがとう」
「べ、別にお礼を言われることなんて有りません。お礼なら私が瀬良先生に言わないと…」
私は正座をしてから、瀬良先生を真っ直ぐに見る。
「今日は助けてくれて、ありがとうございました」
「プハッ、素直なお前ってなんか調子が狂うな」
「なっ///せっかくお礼を言ったのに…」
な、なによ。
恥ずかしいけど、すごく感謝してるから素直にお礼を言ったのにさ。
「冗談だよ。お前が無事で本当に良かった」
瀬良先生が私の頭にそっと手を乗せて、優しく微笑んだ。
…トクンッ、トクンッ、トクンッと心臓が早くなっていく。
な、なにコレ///⁇
なんか急にドキドキしてきたっ。
リュウさんの時は、こんなにドキドキしなかったのに。
「…どうした?」
固まったまま動かない私を、心配そうな顔で覗き込んでくる瀬良先生。
こ、これ以上、近づかないでっ。
心臓がどうにかなっちゃいそうだよっ。
こんなの初めて…
どうしちゃったの?
私ーーーーーーーーー⁇