ハツコイ
*****
アイツに襲われてから数日が経ち、今日は瀬良先生の所へ来てから2回目の土曜日。
あれから、アイツが私の前に姿を現すことも無く、私は平穏な日々を暮らしていた。
「瀬良先生…まだかな?」
夜ご飯の準備をしながら、キッチンで一人寂しく私は呟く。
「今日は遅くなる」と言って、今朝早くから黒いスーツで家を出た瀬良先生は、夕方になってもまだ帰ってこない。
最近は、遅くに帰って来ることが多かった。
必ず夜ご飯には間に合うように帰って来てはくれるけど…
一体、どこへ行っているんだろう?
……雨宮先生と一緒なのかな?
ビーフシチューが入ったお鍋の火を切って、しょんぼりとしながらリビングへ移動する。
溜息を吐きながらソファに座ると同時に、玄関から鍵を開ける音が聞こえてきた。
瀬良先生が帰って来たっ!
私は嬉しくて、走って玄関まで瀬良先生を迎えに行く。
だけど…
玄関のドアが開いて入って来たのは、黒いスーツ姿のリュウさんだった。
「…リュウ、さん?」
「あ、藤崎さん、今晩は」
いつもの優しい笑顔で挨拶をしてくれるリュウさん。
どうしてリュウさんが?瀬良先生は?と思っていると
「ほら、雄大。しっかりして下さい」
「……おぅ」
リュウさんの肩に持たれるように玄関に入ってきた瀬良先生。
「瀬良先生⁈どうしたんですかっ?」
私は瀬良先生の脇の下に入って体を支えた。
瀬良先生からは、お酒の臭いがプンプンとしている。
「瀬良先生、お酒を飲んできたんですか?」
「まぁね…」
一言だけ返事をした瀬良先生は、今まで見たこともないくらいに酔っていた。
私はリュウさんと一緒に、フラフラしている瀬良先生をソファまで連れて行き寝かせる。
こんな瀬良先生の姿は初めてで、どうしたらいいのか分からないでいると、
「今日は雄大のこと、許してあげて下さい」
リュウさんが眉を下げ、悲しそうに笑いながら言った。
「何かあったんですか?」
こんなになるまでお酒を飲むなんて…
きっと、楽しいお酒じゃないよね?
「毎年この日だけ、雄大はどうしても飲み過ぎてしまうんです」
「何か辛い事でもあったんですか?」
リュウさんは私の質問に、自分が答えていいのか少し悩んでいるようだった。
「…ん、、リュウ、水くれ」
瀬良先生がフラフラとしながら体を起こし座る。
「了解」
「あ、私が取ってきます」
「シッ…」とリュウさんが、私の唇に人差し指を当ててウィンクをした。
「//////っ⁇」
私が顔を赤くして固まっていると、リュウさんが耳元で囁く。
『たぶん、雄大は藤崎さんの存在に気付いてないので、静かにしていたら雄大から話しが聞けると思います』
そう言ってリュウさんはキッチンへ行き、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、瀬良先生に渡した。
リュウさんに指示され、私は息を潜めそっと床に座る。
「さんきゅぅ…リュウ」
瀬良先生は、少しユラユラと体を揺らしながら水を飲んだ。
まだ、酔っていて意識が朦朧(もうろう)としているみたい。
「やっぱぁダメだな、俺ぇ…。いつも迷惑かけて悪ぃな、リュウ」
「はは…僕は恩師に雄大のことを頼まれてますからね」
優しく笑いながら答えたリュウさん。
「ふっ…あのジジィ、自惚れやがってぇ…お見通しかよぉ」
瀬良先生は辛そうに笑いながら、ゴツンと頭をテーブルに伏せた。
「大丈夫ですか?雄大」
「ん…まだぁ、ちょっとぉキツイかもなぁ」
「そうですか」
「なぁ…リュウ…、なんでジジィ…死んじまったのかなぁ…」
瀬良先生は顔を伏せたまま、手に持っているミネラルウォーターを握りつぶした。
ペットボトルの口からは、水が溢れ出しテーブルを濡らしていく。
今日、恩師の命日だったと知った私は、この後、瀬良先生の過去を知ることとなった。
アイツに襲われてから数日が経ち、今日は瀬良先生の所へ来てから2回目の土曜日。
あれから、アイツが私の前に姿を現すことも無く、私は平穏な日々を暮らしていた。
「瀬良先生…まだかな?」
夜ご飯の準備をしながら、キッチンで一人寂しく私は呟く。
「今日は遅くなる」と言って、今朝早くから黒いスーツで家を出た瀬良先生は、夕方になってもまだ帰ってこない。
最近は、遅くに帰って来ることが多かった。
必ず夜ご飯には間に合うように帰って来てはくれるけど…
一体、どこへ行っているんだろう?
……雨宮先生と一緒なのかな?
ビーフシチューが入ったお鍋の火を切って、しょんぼりとしながらリビングへ移動する。
溜息を吐きながらソファに座ると同時に、玄関から鍵を開ける音が聞こえてきた。
瀬良先生が帰って来たっ!
私は嬉しくて、走って玄関まで瀬良先生を迎えに行く。
だけど…
玄関のドアが開いて入って来たのは、黒いスーツ姿のリュウさんだった。
「…リュウ、さん?」
「あ、藤崎さん、今晩は」
いつもの優しい笑顔で挨拶をしてくれるリュウさん。
どうしてリュウさんが?瀬良先生は?と思っていると
「ほら、雄大。しっかりして下さい」
「……おぅ」
リュウさんの肩に持たれるように玄関に入ってきた瀬良先生。
「瀬良先生⁈どうしたんですかっ?」
私は瀬良先生の脇の下に入って体を支えた。
瀬良先生からは、お酒の臭いがプンプンとしている。
「瀬良先生、お酒を飲んできたんですか?」
「まぁね…」
一言だけ返事をした瀬良先生は、今まで見たこともないくらいに酔っていた。
私はリュウさんと一緒に、フラフラしている瀬良先生をソファまで連れて行き寝かせる。
こんな瀬良先生の姿は初めてで、どうしたらいいのか分からないでいると、
「今日は雄大のこと、許してあげて下さい」
リュウさんが眉を下げ、悲しそうに笑いながら言った。
「何かあったんですか?」
こんなになるまでお酒を飲むなんて…
きっと、楽しいお酒じゃないよね?
「毎年この日だけ、雄大はどうしても飲み過ぎてしまうんです」
「何か辛い事でもあったんですか?」
リュウさんは私の質問に、自分が答えていいのか少し悩んでいるようだった。
「…ん、、リュウ、水くれ」
瀬良先生がフラフラとしながら体を起こし座る。
「了解」
「あ、私が取ってきます」
「シッ…」とリュウさんが、私の唇に人差し指を当ててウィンクをした。
「//////っ⁇」
私が顔を赤くして固まっていると、リュウさんが耳元で囁く。
『たぶん、雄大は藤崎さんの存在に気付いてないので、静かにしていたら雄大から話しが聞けると思います』
そう言ってリュウさんはキッチンへ行き、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、瀬良先生に渡した。
リュウさんに指示され、私は息を潜めそっと床に座る。
「さんきゅぅ…リュウ」
瀬良先生は、少しユラユラと体を揺らしながら水を飲んだ。
まだ、酔っていて意識が朦朧(もうろう)としているみたい。
「やっぱぁダメだな、俺ぇ…。いつも迷惑かけて悪ぃな、リュウ」
「はは…僕は恩師に雄大のことを頼まれてますからね」
優しく笑いながら答えたリュウさん。
「ふっ…あのジジィ、自惚れやがってぇ…お見通しかよぉ」
瀬良先生は辛そうに笑いながら、ゴツンと頭をテーブルに伏せた。
「大丈夫ですか?雄大」
「ん…まだぁ、ちょっとぉキツイかもなぁ」
「そうですか」
「なぁ…リュウ…、なんでジジィ…死んじまったのかなぁ…」
瀬良先生は顔を伏せたまま、手に持っているミネラルウォーターを握りつぶした。
ペットボトルの口からは、水が溢れ出しテーブルを濡らしていく。
今日、恩師の命日だったと知った私は、この後、瀬良先生の過去を知ることとなった。