ハツコイ
眠れない夜
*****
ダンッ、ダンッ、ダンッ…
いつもより静かな体育館に鳴り響くボールの音と部員達の不平不満の声。
それは仕方ない。
始業式の日に部活があるのは男バスくらいだったから。
「マジで、こんな日まで部活があると思わなかったよなー。」
「はい、はい、文句言わずに練習するよ」
牧野くんが部員達をなだめながら、練習を始めた。
さすがに今日は部活がないと思ったのか、牧野ファンの人達は来ていない。
内心ホッとする私。
だっていつもは、キャーキャー煩いし、私が牧野くんの少しでも近くにいると、とっても鋭い視線が突き刺さるんだもんね。
本当にやってられない。
好きでここに居るわけじゃないのに…
「何?お前ら、こんな日にも部活してんの?」
背後から聞いたことのある声がしたけど、私は気付かないフリをして、真っ直ぐにコートを見ていた。
「おい、おい、また無視かよ。冷たい女だな」
何よ。
「可愛くない女」の次は「冷たい女」ですか?
どうでもいいけど、早くどっかに行ってよね。
私はなにも言わず無視を続ける。
「ぷっ、変な女。まぁ、どうでもいいけど、お前ちょっとついて来いよ」
そう言って、瀬良先生は私の腕を引っ張って、体育館から連れ出そうとした。
「ちょっと!離して下さいっ」
思いっきり瀬良先生の手を振り払おうとしたら、急に頭がクラッとして逆に瀬良先生の肩に寄りかかってしまう。
「あーあ、大人しくついて来たらいいのに。俺の言うことが聞けないんだったら、ここから抱きかかえて保健室まで連れてくぞ」
「は?なに言ってるんですか///」
「嫌なら、大人しくついて来ることだな」
「ちょっと待って下さい。瀬良先生、彼女に何の用ですか?」
コートから走って来た牧野くんが、空いているもう片方の私の腕を掴んで引き止めてくれた。
「俺は職務を全うしてるだけだけど?」
「意味が分かりません。彼女の腕を離して下さい」
珍しく牧野くんが怒ったような表情で言った。
「あぁ、面倒くせぇ。お前こそ、コイツの腕を離せよ」
瀬良先生が牧野くんの手を私の腕から外したと思ったら、急に身体が宙に浮いた。
「きゃっ⁈」
「ちょっと、瀬良先生っ!何してるんですかっ。彼女を降ろしてくださいっ」
牧野くんは、私を抱きかかえた瀬良先生の腕を掴みながら訴える。
「降ろさねーよ。コイツ、体調不良だから保健室に連れて行くんだよ。わかったら黙ってその手を離せ。イケメンくん」
「彼女のどこが体調不良なんですかっ」
「お前、残念なイケメンだな。コイツの顔色見てわかんねぇ?貧血だよ、ひ、ん、け、つ。わかったら手を離せ」
私の顔を見た牧野くんは、素直に瀬良先生の腕から手を離した。
「ん、わかれば宜しい。んじゃ、病人はそのまま暴れんなよ。ちょっとでも暴れたら、マジで落とすよ?」
軽く脅された私は、瀬良先生の言う通り大人しく運ばれることを選択する。
瀬良先生は大人しくなった私を見て、満足気に笑い、本当に抱きかかえたまま保健室へ連れて行った。
ダンッ、ダンッ、ダンッ…
いつもより静かな体育館に鳴り響くボールの音と部員達の不平不満の声。
それは仕方ない。
始業式の日に部活があるのは男バスくらいだったから。
「マジで、こんな日まで部活があると思わなかったよなー。」
「はい、はい、文句言わずに練習するよ」
牧野くんが部員達をなだめながら、練習を始めた。
さすがに今日は部活がないと思ったのか、牧野ファンの人達は来ていない。
内心ホッとする私。
だっていつもは、キャーキャー煩いし、私が牧野くんの少しでも近くにいると、とっても鋭い視線が突き刺さるんだもんね。
本当にやってられない。
好きでここに居るわけじゃないのに…
「何?お前ら、こんな日にも部活してんの?」
背後から聞いたことのある声がしたけど、私は気付かないフリをして、真っ直ぐにコートを見ていた。
「おい、おい、また無視かよ。冷たい女だな」
何よ。
「可愛くない女」の次は「冷たい女」ですか?
どうでもいいけど、早くどっかに行ってよね。
私はなにも言わず無視を続ける。
「ぷっ、変な女。まぁ、どうでもいいけど、お前ちょっとついて来いよ」
そう言って、瀬良先生は私の腕を引っ張って、体育館から連れ出そうとした。
「ちょっと!離して下さいっ」
思いっきり瀬良先生の手を振り払おうとしたら、急に頭がクラッとして逆に瀬良先生の肩に寄りかかってしまう。
「あーあ、大人しくついて来たらいいのに。俺の言うことが聞けないんだったら、ここから抱きかかえて保健室まで連れてくぞ」
「は?なに言ってるんですか///」
「嫌なら、大人しくついて来ることだな」
「ちょっと待って下さい。瀬良先生、彼女に何の用ですか?」
コートから走って来た牧野くんが、空いているもう片方の私の腕を掴んで引き止めてくれた。
「俺は職務を全うしてるだけだけど?」
「意味が分かりません。彼女の腕を離して下さい」
珍しく牧野くんが怒ったような表情で言った。
「あぁ、面倒くせぇ。お前こそ、コイツの腕を離せよ」
瀬良先生が牧野くんの手を私の腕から外したと思ったら、急に身体が宙に浮いた。
「きゃっ⁈」
「ちょっと、瀬良先生っ!何してるんですかっ。彼女を降ろしてくださいっ」
牧野くんは、私を抱きかかえた瀬良先生の腕を掴みながら訴える。
「降ろさねーよ。コイツ、体調不良だから保健室に連れて行くんだよ。わかったら黙ってその手を離せ。イケメンくん」
「彼女のどこが体調不良なんですかっ」
「お前、残念なイケメンだな。コイツの顔色見てわかんねぇ?貧血だよ、ひ、ん、け、つ。わかったら手を離せ」
私の顔を見た牧野くんは、素直に瀬良先生の腕から手を離した。
「ん、わかれば宜しい。んじゃ、病人はそのまま暴れんなよ。ちょっとでも暴れたら、マジで落とすよ?」
軽く脅された私は、瀬良先生の言う通り大人しく運ばれることを選択する。
瀬良先生は大人しくなった私を見て、満足気に笑い、本当に抱きかかえたまま保健室へ連れて行った。