ハツコイ
最後の土曜日
*****
チュンチュン…とスズメの鳴き声で、私は朝が来たのだと気付く。
昨夜の瀬良先生の話を聞いて、なんだか眠れなかった。
まさか、瀬良先生にあんな過去があっただなんて思いもしなかったから…
ずっと一人で頑張ってきた瀬良先生。
そんな瀬良先生の心を温めた豊田先生。
今度は……
私が瀬良先生の心を守っていきたいーーー
そう思っていると、トントンとドアをノックする音がした。
「藤崎…起きてるか?」
「は、はいっ」
こんな朝早くに瀬良先生が部屋に来るだなんて思っていなかった私は、慌てて手櫛で髪を整えてからドアを開ける。
ドアを開けると、そこには髪が濡れていつも以上に色気を増した瀬良先生が立っていた。
シャワーを浴びたのか、瀬良先生からは石鹸の香りがしてくる。
私は無意識のうちに、そんな瀬良先生に見惚れてしまっていた。
「お前…だから、そんなに無防備になるなって///」
「え?」
「いや…/// とりあえず、着替えてからリビングに来い。話しがある」
「……はい」
瀬良先生は、私の返事が聞こえたか聞こえないかくらいの早さで回れ右をしてリビングへ行ってしまった。
無防備??
それより…話しってなんだろう?
私はパジャマから私服に着替えて、瀬良先生の待つリビングへ向う。
リビングへ入ると、瀬良先生がタオルで髪をクシャクシャと拭いていた。
なんだか、そんな特別な人でしか見れないであろう光景に胸がキュンとなる。
私の存在に気づいた瀬良先生が「そこへ座って」と言ったので、私は静かに瀬良先生の向かいに座った。
「まずは…昨夜は悪かったな/// 俺の話したことは忘れてくれ」
瀬良先生は髪を拭いていたタオルを首に掛け、バツが悪そうな顔で言う。
瀬良先生…昨日のこと覚えてるんだ。
でも、どうして?
私は瀬良先生のことが少しでも知れて嬉しかったのに。
そんなこと言わないでよ。
「…嫌です」
「お前なぁ…」
瀬良先生はとても困った顔をしたけど、私は絶対に忘れてなんかあげないんだから。
瀬良先生は下を向いて頭をワシャワシャッとしてから
「とりあえず、その件は置いといて…本題に入る。俺は回りくどい言い方が嫌いだから単刀直入に言うぞ」
「……はい」
きっと、あのひと言を言われるんだ。
正直、まだ言われたくない。
私はもっと瀬良先生と一緒に…………
「そろそろ、自分の家に帰った方がいい」
ついに言われてしまった。
私は泣きそうになるのをグッと我慢し、震えそうになる声をなんとか押さえて瀬良先生に返事をする。
「………は、い」
私は勢いよく立ち上がり、すぐにリビングから出て行こうとした。
「ちょっと待てっ」
瀬良先生が、私の手首を掴み引き寄せ抱きしめる。
「…わりぃ、言い方が悪かったな」
瀬良先生の低い心地の良い声が、耳元から聞こえてきて、我慢していた涙が一気に溢れ出した。
「悪かったって、泣くなよ。お前に泣かれると俺、マジで弱いんだよ…」
瀬良先生が眉を下げ困った表情で、私の涙を優しく拭ってくれる。
その瀬良先生の優しさに、「あの家に帰りたくない」「瀬良先生と離れたくない」「誰も困らせたくない」色んな感情が込み上げてきて私は涙が止まらなくなる。
そんな私を瀬良先生は、泣き止むまでずっと優しく抱きしめていてくれた。
「…ごめんなさい。もう、大丈夫です」
私はそっと瀬良先生の胸に手を押し当て離れる。
「少しは落ち着いたか?無理すんなよ?」
「はい、大丈夫です」
「…さっきの話しの続き、いいか?」
私はコクンと頭を下げた。
瀬良先生は私をソファにそっと座らせてから、ゆっくりと優しい口調で話し出す。
「俺は無理にお前をこの家から出そうとは思ってないんだ。そのことを前提に話しを聞いて欲しい」
「…はい」
「藤崎がここへ来てから二週間になる。そろそろ、お前も母親も気持ちが落ち着いた頃だと思うんだ。俺も付いて行くから、今日、これから家に帰って母親と話しをしてみないか?」
今日、これから…ママと…?
…………自信がない。
ママが私を受け入れてくれるわけがない。
ママは私じゃなくて、アイツの方が必要なんだから。
娘が家出をしたというのに、二週間も連絡がないんだよ?
私なんて…
「お前は、自信持っていいんだよ」
瀬良先生が私の頭に手をポンと乗せ言った。
「…え?」
「お前はちゃんと望まれて生まれてきてるよ。母親もきっとお前を必要としてるから自信持て」
どうして…
何も言ってないのに、瀬良先生は私の気持ちをわかってくれるんだろう…
今、私が言って欲しい言葉を言ってくれた。
自分に自信が持てなくて、ママに会うのが怖かったのに、瀬良先生の言葉で少し勇気が湧いてきた。
「…はい」
私は少し笑顔で答える。
「よし、じゃあ、とりあえず朝メシ食うか」
ニカッと笑った瀬良先生はキッチンへ向かった。
「私も一緒に作ります」
瀬良先生と食べる最後の朝食になるかも知れないから、出来るだけ思い出に残る楽しい食事にしたい。
この後、瀬良先生と笑いながら料理をし、二人で楽しく会話をしながら朝食を取った。
チュンチュン…とスズメの鳴き声で、私は朝が来たのだと気付く。
昨夜の瀬良先生の話を聞いて、なんだか眠れなかった。
まさか、瀬良先生にあんな過去があっただなんて思いもしなかったから…
ずっと一人で頑張ってきた瀬良先生。
そんな瀬良先生の心を温めた豊田先生。
今度は……
私が瀬良先生の心を守っていきたいーーー
そう思っていると、トントンとドアをノックする音がした。
「藤崎…起きてるか?」
「は、はいっ」
こんな朝早くに瀬良先生が部屋に来るだなんて思っていなかった私は、慌てて手櫛で髪を整えてからドアを開ける。
ドアを開けると、そこには髪が濡れていつも以上に色気を増した瀬良先生が立っていた。
シャワーを浴びたのか、瀬良先生からは石鹸の香りがしてくる。
私は無意識のうちに、そんな瀬良先生に見惚れてしまっていた。
「お前…だから、そんなに無防備になるなって///」
「え?」
「いや…/// とりあえず、着替えてからリビングに来い。話しがある」
「……はい」
瀬良先生は、私の返事が聞こえたか聞こえないかくらいの早さで回れ右をしてリビングへ行ってしまった。
無防備??
それより…話しってなんだろう?
私はパジャマから私服に着替えて、瀬良先生の待つリビングへ向う。
リビングへ入ると、瀬良先生がタオルで髪をクシャクシャと拭いていた。
なんだか、そんな特別な人でしか見れないであろう光景に胸がキュンとなる。
私の存在に気づいた瀬良先生が「そこへ座って」と言ったので、私は静かに瀬良先生の向かいに座った。
「まずは…昨夜は悪かったな/// 俺の話したことは忘れてくれ」
瀬良先生は髪を拭いていたタオルを首に掛け、バツが悪そうな顔で言う。
瀬良先生…昨日のこと覚えてるんだ。
でも、どうして?
私は瀬良先生のことが少しでも知れて嬉しかったのに。
そんなこと言わないでよ。
「…嫌です」
「お前なぁ…」
瀬良先生はとても困った顔をしたけど、私は絶対に忘れてなんかあげないんだから。
瀬良先生は下を向いて頭をワシャワシャッとしてから
「とりあえず、その件は置いといて…本題に入る。俺は回りくどい言い方が嫌いだから単刀直入に言うぞ」
「……はい」
きっと、あのひと言を言われるんだ。
正直、まだ言われたくない。
私はもっと瀬良先生と一緒に…………
「そろそろ、自分の家に帰った方がいい」
ついに言われてしまった。
私は泣きそうになるのをグッと我慢し、震えそうになる声をなんとか押さえて瀬良先生に返事をする。
「………は、い」
私は勢いよく立ち上がり、すぐにリビングから出て行こうとした。
「ちょっと待てっ」
瀬良先生が、私の手首を掴み引き寄せ抱きしめる。
「…わりぃ、言い方が悪かったな」
瀬良先生の低い心地の良い声が、耳元から聞こえてきて、我慢していた涙が一気に溢れ出した。
「悪かったって、泣くなよ。お前に泣かれると俺、マジで弱いんだよ…」
瀬良先生が眉を下げ困った表情で、私の涙を優しく拭ってくれる。
その瀬良先生の優しさに、「あの家に帰りたくない」「瀬良先生と離れたくない」「誰も困らせたくない」色んな感情が込み上げてきて私は涙が止まらなくなる。
そんな私を瀬良先生は、泣き止むまでずっと優しく抱きしめていてくれた。
「…ごめんなさい。もう、大丈夫です」
私はそっと瀬良先生の胸に手を押し当て離れる。
「少しは落ち着いたか?無理すんなよ?」
「はい、大丈夫です」
「…さっきの話しの続き、いいか?」
私はコクンと頭を下げた。
瀬良先生は私をソファにそっと座らせてから、ゆっくりと優しい口調で話し出す。
「俺は無理にお前をこの家から出そうとは思ってないんだ。そのことを前提に話しを聞いて欲しい」
「…はい」
「藤崎がここへ来てから二週間になる。そろそろ、お前も母親も気持ちが落ち着いた頃だと思うんだ。俺も付いて行くから、今日、これから家に帰って母親と話しをしてみないか?」
今日、これから…ママと…?
…………自信がない。
ママが私を受け入れてくれるわけがない。
ママは私じゃなくて、アイツの方が必要なんだから。
娘が家出をしたというのに、二週間も連絡がないんだよ?
私なんて…
「お前は、自信持っていいんだよ」
瀬良先生が私の頭に手をポンと乗せ言った。
「…え?」
「お前はちゃんと望まれて生まれてきてるよ。母親もきっとお前を必要としてるから自信持て」
どうして…
何も言ってないのに、瀬良先生は私の気持ちをわかってくれるんだろう…
今、私が言って欲しい言葉を言ってくれた。
自分に自信が持てなくて、ママに会うのが怖かったのに、瀬良先生の言葉で少し勇気が湧いてきた。
「…はい」
私は少し笑顔で答える。
「よし、じゃあ、とりあえず朝メシ食うか」
ニカッと笑った瀬良先生はキッチンへ向かった。
「私も一緒に作ります」
瀬良先生と食べる最後の朝食になるかも知れないから、出来るだけ思い出に残る楽しい食事にしたい。
この後、瀬良先生と笑いながら料理をし、二人で楽しく会話をしながら朝食を取った。