ハツコイ
*****
私は瀬良先生から逃げるようにして図書室へ駆け込んだ。
幸いこの時間は誰も図書室に居なかったので、私は本棚の陰に隠れて床に座り込む。
抱えた膝に額を当てて世界を閉ざし、自分の殻に閉じこもった。
「もう…やだ」
我慢していた涙が零れ、スカートの色を変えていく。
告白なんてしなければ良かった…
なぜ、あの時「すき」だなんて言ってしまったんだろう。
自分の心の中にしまっておけば、瀬良先生とこんな感じにならなくて済んだのに…。
私のバカ…。
「…藤崎さん」
声を掛けられたが、私は膝に額を当てたまま顔を上げなかった。
だって、上げなくても牧野くんだって分かったから。
牧野くんは私の隣にそっと静かに座り「大丈夫?」と優しく声を掛けてくれる。
どうして、この人はフラれた相手にこんなに優しく出来るんだろう?
私なんて…瀬良先生に感情的になってばかりなのに…。
「…ゴメンね。僕が保健室の前なんかで告白しちゃったから、瀬良先生とこんな感じになっちゃったんだよね?しかも、変な提案までしてしまって…」
「…違うよ。牧野くんの所為じゃないよ」
そう言って私が顔を上げると、牧野くんも私と同じように抱えた膝に額をのせ、こちらを見ていた。
肩が触れるくらいの距離に座っていたため、思ったより牧野くんの顔が近くてドキッとなる。
「なんだか、今が一番、本当の藤崎さんに触れてる感じがする」
とニッコリと笑って言った。
そういえば、さっき私…敬語を使うの忘れてた。
「気のせいですよ///」
「あ、また敬語に戻った。ダメだよ、今から僕に敬語は禁止だからね」
「わかった?」と牧野くんは私の頭の上に軽く手を当てる。
これまで牧野くんに関わりたくないと思っていたけど、今は不思議とこの空間が嫌じゃないと思ってる私がいた。
「…わ、かった///」
そう答えると、「ありがとう」と牧野くんはいつもの爽やかな笑顔を私に向ける。
「ねぇ…どうして、牧野くんはそんなに優しいの?」
私は真っ直ぐに牧野くんの目を見て聞いてみた。
「え?」
予想外のことを聞かれたのか、少し驚いたように目を丸くした牧野くん。
「…私、牧野くんの気持ちに応えられなかったのに、、、どうして優しくしてくれるの?」
「僕は…全然優しくなんてないよ。だって、瀬良先生の言う通りだから…」
「どういうこと?」
「どういった形であれ藤崎さんの側に居たいっていうのも、他の男が近づかないようにっていうのも、全部、瀬良先生の言った通りなんだ。
下心ありありなんだよ僕は」
「…あはは、それって自分で言っちゃったらダメなんじゃないの?牧野くんって正直者なんだね」
自分で全部バラしてしまう牧野くんが、なんだか可笑しくって、私は声に出して笑った。
「……か、わいい///」
「え?なに?」
「笑った藤崎さんは、とても可愛いよ///」
肩が触れそうなくらいの距離に隣同士で座っているため、牧野くんの顔がとても近くて私の心臓がドキドキと音を立てる。
「…ばか///」
「照れてる藤崎さんも可愛い」
「もう、恥ずかしいからやめて///」
私はニコニコしてこっちを見ている牧野くんをキッと睨む。
「怒ってる藤さ…モゴモゴ」
また、照れるような事を言い出したので、私は牧野くんの口を両手で覆った。
一度目を大きく見開いた牧野くんは、そのあと黙ったまま私を真っ直ぐに見つめる。
次第に牧野くんの視線が熱を帯びていき、大きな手が私の後頭部に当てられた。
そして、グッと引き寄せられ……
牧野くんとの距離がゼロになる。
牧野くんの口を押さえた私の手の甲に、自分の唇が触れた。
閉じられていた牧野くんの目がゆっくりと開けられて、私の後頭部から手を離す。
元の距離に戻った牧野くんは、私をじっと見つめて言った。
「やっぱり、藤崎さんのこと諦められない。
僕が瀬良先生のことを忘れさせてあげる」
私は瀬良先生から逃げるようにして図書室へ駆け込んだ。
幸いこの時間は誰も図書室に居なかったので、私は本棚の陰に隠れて床に座り込む。
抱えた膝に額を当てて世界を閉ざし、自分の殻に閉じこもった。
「もう…やだ」
我慢していた涙が零れ、スカートの色を変えていく。
告白なんてしなければ良かった…
なぜ、あの時「すき」だなんて言ってしまったんだろう。
自分の心の中にしまっておけば、瀬良先生とこんな感じにならなくて済んだのに…。
私のバカ…。
「…藤崎さん」
声を掛けられたが、私は膝に額を当てたまま顔を上げなかった。
だって、上げなくても牧野くんだって分かったから。
牧野くんは私の隣にそっと静かに座り「大丈夫?」と優しく声を掛けてくれる。
どうして、この人はフラれた相手にこんなに優しく出来るんだろう?
私なんて…瀬良先生に感情的になってばかりなのに…。
「…ゴメンね。僕が保健室の前なんかで告白しちゃったから、瀬良先生とこんな感じになっちゃったんだよね?しかも、変な提案までしてしまって…」
「…違うよ。牧野くんの所為じゃないよ」
そう言って私が顔を上げると、牧野くんも私と同じように抱えた膝に額をのせ、こちらを見ていた。
肩が触れるくらいの距離に座っていたため、思ったより牧野くんの顔が近くてドキッとなる。
「なんだか、今が一番、本当の藤崎さんに触れてる感じがする」
とニッコリと笑って言った。
そういえば、さっき私…敬語を使うの忘れてた。
「気のせいですよ///」
「あ、また敬語に戻った。ダメだよ、今から僕に敬語は禁止だからね」
「わかった?」と牧野くんは私の頭の上に軽く手を当てる。
これまで牧野くんに関わりたくないと思っていたけど、今は不思議とこの空間が嫌じゃないと思ってる私がいた。
「…わ、かった///」
そう答えると、「ありがとう」と牧野くんはいつもの爽やかな笑顔を私に向ける。
「ねぇ…どうして、牧野くんはそんなに優しいの?」
私は真っ直ぐに牧野くんの目を見て聞いてみた。
「え?」
予想外のことを聞かれたのか、少し驚いたように目を丸くした牧野くん。
「…私、牧野くんの気持ちに応えられなかったのに、、、どうして優しくしてくれるの?」
「僕は…全然優しくなんてないよ。だって、瀬良先生の言う通りだから…」
「どういうこと?」
「どういった形であれ藤崎さんの側に居たいっていうのも、他の男が近づかないようにっていうのも、全部、瀬良先生の言った通りなんだ。
下心ありありなんだよ僕は」
「…あはは、それって自分で言っちゃったらダメなんじゃないの?牧野くんって正直者なんだね」
自分で全部バラしてしまう牧野くんが、なんだか可笑しくって、私は声に出して笑った。
「……か、わいい///」
「え?なに?」
「笑った藤崎さんは、とても可愛いよ///」
肩が触れそうなくらいの距離に隣同士で座っているため、牧野くんの顔がとても近くて私の心臓がドキドキと音を立てる。
「…ばか///」
「照れてる藤崎さんも可愛い」
「もう、恥ずかしいからやめて///」
私はニコニコしてこっちを見ている牧野くんをキッと睨む。
「怒ってる藤さ…モゴモゴ」
また、照れるような事を言い出したので、私は牧野くんの口を両手で覆った。
一度目を大きく見開いた牧野くんは、そのあと黙ったまま私を真っ直ぐに見つめる。
次第に牧野くんの視線が熱を帯びていき、大きな手が私の後頭部に当てられた。
そして、グッと引き寄せられ……
牧野くんとの距離がゼロになる。
牧野くんの口を押さえた私の手の甲に、自分の唇が触れた。
閉じられていた牧野くんの目がゆっくりと開けられて、私の後頭部から手を離す。
元の距離に戻った牧野くんは、私をじっと見つめて言った。
「やっぱり、藤崎さんのこと諦められない。
僕が瀬良先生のことを忘れさせてあげる」