ハツコイ
落ち着かない気持ち
*****
翌朝。
私は誰も起きてない時間にそっと家を出てきた。
昨夜は、あれから怖くて一睡もしていない。
アイツは「また来る」って言った。
「また」っていつ?
どうして?
どうして、深夜に私の部屋に来るの?
ママはアイツと同じ部屋で寝てるのに、どうして気付いてくれないの?
ママ……私、、怖いよ。
アイツなんかのどこがいいの?
なんか変だよ、アイツ。
私は下を向いて、トボトボと桜並木の下を歩きながら考える。
ーーー瀬良先生だったら……助けてくれるかな?
いや、実際に何か起こったわけじゃないし、そもそも私の勘違いかも知れない。
そんな状態でどう説明するの?
しかも、昨日初めて会ったばかりの人を信用していいの?
…………無理、でしょ。
色んなことを考えているうちに学校に着いたが、早く来すぎてまだ校門が閉まっていた。
「そりゃ、そうだよね…」
私は仕方なく校門が開くまで、壁にもたれて待っていることにする。
もう少ししたら、朝練の時間だから部員が誰か来るし、その頃には校門も開くだろう。
それにしても…四月のこの時間は、さすがにまだ寒いな。
私は自分の肩を抱き少しでも寒さを和らげようとしていたとき、
「お前、こんな朝早くに何してんの?」
後ろから声を掛けられた。
この口の悪さは……
「…瀬良先生こそ」
下にあった視線を上にあげると、瀬良先生の姿があった。
「俺は今日、当番だから早いんだよ」
眠そうに欠伸をしながら、校門の鍵を開けている瀬良先生。
「クシュン…」
校門が開くのを待っていた私は、寒くて身体が冷えたのかクシャミをしてしまった。
「は?お前、何時からここにいるんだよ。スゲー冷たいじゃん」
そう言って鍵を開け終わった瀬良先生は、突然、私の頬に手を当てた。
「ーーーっ///」
顔中に熱が集まっていくのがわかる。
「ぷっ、なに赤くなってんの?昨日は青で今日は赤かよ。忙しーヤツだな」
「ほっといて下さい///」
瀬良先生が急にそんなことするからでしょっ///
もうっ、マジで瀬良先生の近くは落ち着かない。
自分のペースが乱される。
こんなこと今まで無かったのに…
………………………………………………………………
私が今のように無愛想になったのは、ママが彼氏を家に連れて来るようになってから。
それまでは、よく笑っていつも友達とワイワイと騒いでた。
ママは元から弱い人で、誰かに寄りかからないと生きていけない人。
だから、パパと離婚したときは本当に悲惨だった。
毎日のように泣いては、お酒を呑んで…
そのうちに身体を壊してしまうんじゃないかって心配になった。
そんなママを見ていて、私がママの支えになろうと思い頑張ってきたけど…ダメだった。
ママの心の隙間を埋める事ができるのは、私じゃなかったんだ。
彼氏が出来て、少しずつ元気を取り戻してきたママ。
そんなママを見て、初めは安心したし嬉しくもあった。
でも、相手に尽くしすぎるママはすぐに浮気をされて、別れて、また新しい彼氏が出来ての繰り返し。
そのうち、だんだんと私のことなんてかまわなくなってきて…
ママはいつも娘の私じゃなくて、彼氏のことで頭がいっぱい…
母親に構ってもらえなくなった私の心は、どんどん冷え切っていった。
結局、私が頑張ったところで何も変わらない。
誰も救えない。
じゃあ、何のために頑張るの?
頑張る必要なんてないんじゃないの?
私なんて必要とされてないんじゃないの?
…もう、いいや。
疲れた。
私は、一人でいいや…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
「……い、おいっ。聞いてんのか?」
「えっ⁈」
私は瀬良先生の声で我に返った。
「え?じゃねーよ。ほら、これ飲めよ」
気がつけば保健室に来ていて、湯気が出ているカップが私の目の前に差し出されていた。
「…あ、り、がとう、ございます」
私はそれを受け取り、コクン…と一口飲んでみる。
口の中に甘いココアの香りがひろがり、少しホッとする。
「ーーったく、お前ってホント手がかかると言うか…」
そう言って瀬良先生は、はぁ…とため息をついてから、カップに口を付けた。
「放っておけばいいじゃないですか」
「ホント可愛くない女。何をそんなに強がってんの?」
「別に強がってなんていません」
「へぇ、俺には強がってように見えるし、構って欲しいって顔にも見えるけど?」
「気のせいじゃないですか?」
私は瀬良先生に全てを見透かされたような気分になり、手をぎゅっと握りしめ動揺を必死に隠す。
「あっそ?まぁ、お前がそう言うんだったらいいけど、何かあったときはすぐに言えよ」
「別に何もありませんから」
嘘…。
本当は全部話して、今すぐにでも助けて欲しい。
でも……………
「これ、ありがとうございました。朝練があるので、失礼します」
私は机にカップを置き、早足で保健室を出て行った。
翌朝。
私は誰も起きてない時間にそっと家を出てきた。
昨夜は、あれから怖くて一睡もしていない。
アイツは「また来る」って言った。
「また」っていつ?
どうして?
どうして、深夜に私の部屋に来るの?
ママはアイツと同じ部屋で寝てるのに、どうして気付いてくれないの?
ママ……私、、怖いよ。
アイツなんかのどこがいいの?
なんか変だよ、アイツ。
私は下を向いて、トボトボと桜並木の下を歩きながら考える。
ーーー瀬良先生だったら……助けてくれるかな?
いや、実際に何か起こったわけじゃないし、そもそも私の勘違いかも知れない。
そんな状態でどう説明するの?
しかも、昨日初めて会ったばかりの人を信用していいの?
…………無理、でしょ。
色んなことを考えているうちに学校に着いたが、早く来すぎてまだ校門が閉まっていた。
「そりゃ、そうだよね…」
私は仕方なく校門が開くまで、壁にもたれて待っていることにする。
もう少ししたら、朝練の時間だから部員が誰か来るし、その頃には校門も開くだろう。
それにしても…四月のこの時間は、さすがにまだ寒いな。
私は自分の肩を抱き少しでも寒さを和らげようとしていたとき、
「お前、こんな朝早くに何してんの?」
後ろから声を掛けられた。
この口の悪さは……
「…瀬良先生こそ」
下にあった視線を上にあげると、瀬良先生の姿があった。
「俺は今日、当番だから早いんだよ」
眠そうに欠伸をしながら、校門の鍵を開けている瀬良先生。
「クシュン…」
校門が開くのを待っていた私は、寒くて身体が冷えたのかクシャミをしてしまった。
「は?お前、何時からここにいるんだよ。スゲー冷たいじゃん」
そう言って鍵を開け終わった瀬良先生は、突然、私の頬に手を当てた。
「ーーーっ///」
顔中に熱が集まっていくのがわかる。
「ぷっ、なに赤くなってんの?昨日は青で今日は赤かよ。忙しーヤツだな」
「ほっといて下さい///」
瀬良先生が急にそんなことするからでしょっ///
もうっ、マジで瀬良先生の近くは落ち着かない。
自分のペースが乱される。
こんなこと今まで無かったのに…
………………………………………………………………
私が今のように無愛想になったのは、ママが彼氏を家に連れて来るようになってから。
それまでは、よく笑っていつも友達とワイワイと騒いでた。
ママは元から弱い人で、誰かに寄りかからないと生きていけない人。
だから、パパと離婚したときは本当に悲惨だった。
毎日のように泣いては、お酒を呑んで…
そのうちに身体を壊してしまうんじゃないかって心配になった。
そんなママを見ていて、私がママの支えになろうと思い頑張ってきたけど…ダメだった。
ママの心の隙間を埋める事ができるのは、私じゃなかったんだ。
彼氏が出来て、少しずつ元気を取り戻してきたママ。
そんなママを見て、初めは安心したし嬉しくもあった。
でも、相手に尽くしすぎるママはすぐに浮気をされて、別れて、また新しい彼氏が出来ての繰り返し。
そのうち、だんだんと私のことなんてかまわなくなってきて…
ママはいつも娘の私じゃなくて、彼氏のことで頭がいっぱい…
母親に構ってもらえなくなった私の心は、どんどん冷え切っていった。
結局、私が頑張ったところで何も変わらない。
誰も救えない。
じゃあ、何のために頑張るの?
頑張る必要なんてないんじゃないの?
私なんて必要とされてないんじゃないの?
…もう、いいや。
疲れた。
私は、一人でいいや…
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「……い、おいっ。聞いてんのか?」
「えっ⁈」
私は瀬良先生の声で我に返った。
「え?じゃねーよ。ほら、これ飲めよ」
気がつけば保健室に来ていて、湯気が出ているカップが私の目の前に差し出されていた。
「…あ、り、がとう、ございます」
私はそれを受け取り、コクン…と一口飲んでみる。
口の中に甘いココアの香りがひろがり、少しホッとする。
「ーーったく、お前ってホント手がかかると言うか…」
そう言って瀬良先生は、はぁ…とため息をついてから、カップに口を付けた。
「放っておけばいいじゃないですか」
「ホント可愛くない女。何をそんなに強がってんの?」
「別に強がってなんていません」
「へぇ、俺には強がってように見えるし、構って欲しいって顔にも見えるけど?」
「気のせいじゃないですか?」
私は瀬良先生に全てを見透かされたような気分になり、手をぎゅっと握りしめ動揺を必死に隠す。
「あっそ?まぁ、お前がそう言うんだったらいいけど、何かあったときはすぐに言えよ」
「別に何もありませんから」
嘘…。
本当は全部話して、今すぐにでも助けて欲しい。
でも……………
「これ、ありがとうございました。朝練があるので、失礼します」
私は机にカップを置き、早足で保健室を出て行った。