烏丸陽佑のユウウツ
・苦あれば、楽はあるのか…。
「…何でなんですかね」
「ん?あ。空いてるけど、どうする?」
「あ、じゃあ、スコッチ、お願いします」
「ん」
「俺や部長が好きな気持ちを打ち明けたのは確かですけど、それより何より…あまり認めて言いたくは無いけど…、陽佑さんは梨薫さんにかなり慕われてる気がするんですけど。それって。…何でも陽佑さん陽佑さん、て感じで。俺からしたら陽佑さんが羨ましい…」
ほっほぅ。そこはまあ?何だろうな、信頼みたいなもんかな…。所詮それだけだよ。
「んん…ほい、どうぞ。…そうだよ?慕われてる。かなりな?いつの間にか…、慕われ過ぎてしまったんだな、これが…」
「あ゙、…また自虐ネタの始まりにさせてしまいますかね」
「ネタってな…はぁぁ。まあ、何もない間柄だ。…夢を見たんだとさ…俺と黒埼君が、こんな風に話してるような光景の」
「へぇ…何かあったんですか?梨薫さんが夢に見るような、んー、印象付けるような事とか」
「無いよ。それは黒埼君の方が確率は高いだろ。俺はついでの出演だったかも知れない」
「俺は…今更って言えば今更でしょ。印象付くって感じてくれてるなら、会社で会ってますから、ほぼ毎日印象付くでしょうし」
「梨薫ちゃんが夢に見た事を話すと関連付いた事が何か起きそうで…はぁ…ちょっと不安になるよ…」
「んー、兄の事はもう何も無いと思いますが、別の何か…起きますかね…」
「全く解らんな。想像が出来ん」
あるとするなら、夢で見たような部長さんへの告白…からの、…だろうな…。それ以外無いような気がする。…現実になったら嫌だけど……正夢ってやつ、だな。
「…そうですね。あー、今日は梨薫さんは来なかったんですか?」
「あ、ああ」
「ふ〜ん。何かあった日には来そうなのに…外したかな…もう来ないかな…」
「んん?ハハ、それもあって来たのか。どうだろうなぁ…今日は早く帰ってご飯食べて…、風呂に入って、早く寝ようと思ったんじゃないのか?…中々眠れなかったようだから」
「今夜寄ったら、ここで会えそうな気がしたんですけどね…。俺、“引き”が弱いのかな…」
「さぁ、それはどうだろうな」
「ん…、はぁ、では帰ります」
「そうか。もう来ないと踏んだか。わざわざ、良かったんだぞ?」
「え?」
「今日、律儀に謝りに来なくて良かったのにって事さ。俺は、二人の間で何があろうが、関わりには関与しない。…気持ちとは別だがな」
「…はい、有り難うございますと言っておきます。じゃあ…おやすみなさい」
「ああ、また来いよ。あ、来るなら一人でだぞ?連れ立って来たりするなよ?」
「ハハハ。今のところは、ですね。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ、気をつけてな」
「はい」