烏丸陽佑のユウウツ
はぁ…。こんなもんだな。直接言って、断られたとかでは無いが、結果、これで良かったよ。
特に今だって考えていた訳じゃなかったけど。これも一つのタイミングだ…これでいい。人に言ってしまえば踏ん切りもつく。
…俺らしくもない。うじうじ考えるなんて、らしくないんだよ。通じない思いに縛られてどうする。
黒埼君は確かに毎日堪らないだろうな。梨薫ちゃんはあの性格だ。性格というか…。黒埼君はちゃんと好きだからな。落ち着かなくて気が気じゃないのはよく解る。それが当たり前だ。
訳はあっても、男の部屋で暮らすと聞いて、落ち着いてる方が可笑しいんだよ。そう…冷静でいる俺は元々可笑しいんだよ。一緒に居るのが黒埼君じゃない、落ち着いた人とだからと、部長さんだからと思ってたから?……その考え方もどうなんだ…。
…あー、もう、止め止め。もういいじゃないか、どうなろうと。知った事ではない。関係ない。
こんな風にうじうじ暫く気になるのはしようがない、ある事なんだから。沸々するのは仕方ない事なんだよ。
思いが行ったり来たりするのは、口で言う程、そう簡単に切り替えられないからだよ。突き詰めたら、思いが溢れる時も、まだ…あるだろうからな。…はぁ。
「陽佑さん…」
…おぉ、居たんだった。…はぁ、俺、黄昏れてたか。…情けないな、全く。
「何だ、悪い、空いてたか。どうする?」
「あ、えっと、同じモノで」
「ん?うん、解った」
「あー、陽佑さんのと、同じモノにしてください」
「これか?」
「はい、それです」
「…はい、どうぞ」
「有り難うございます。…どんなモノを味わっているのか…知りたくて」
終わりにさせた俺の気持ちに寄り添うつもりか…。可愛い事してくれるじゃないか。
「味なんて、まあ、そんな味だ。カクテルなんだ。苦くもあり少し甘くもある。味は特に変わった事はない」
違うのは意味にこだわった部分だけだ。
「…そうですね。はぁ…俺は…俺も慌てない事にしました。部長の部屋を使わせて貰うって事、梨薫さんは俺に話してくれた訳だし。それって、誤解しないでねって意味で、言ってくれたんですよね」
「…そうだな」
まあ、報告、だな。
「…ですよね」
解ってます。誤解しないでねっていうのは…はぁ…身内に話すような感覚だと思うけど。それでも俺にだけなんだ。
嫌な腹の探り合いだ。俺には言って来たんです、と、陽佑さんに優越から念押ししているようで…。してるんだ、俺。俺は陽佑さんとは違うんですよって。
「また元の生活に戻るつもりはあるんだと思っておきます。悠長と言うより、余裕で何もしてないんだと、自分の中ではそう思う事にします」
「そうだな」