艶恋オフィス クールな室長に求愛されてます
駒宮室長は真っすぐに私のことを見つめていた。

そのせいで私の視線と駒宮室長の視線がかち合ってしまう。

少しだけ揺れているその瞳を、私は反らすことが出来ない。


「……へっ、変態!!」

アルコールのせいで回らない頭をフル回転させて、返した言葉はそんなどうでもいい言葉で。

それでいて、少しだけ上擦ってしまった声は、きっと私の動揺なんて駒宮室長にバレバレだっただろう。


『好きな女からのキス1つ』

駒宮室長の言葉が私の胸の奥をざわつかせる。

駒宮室長は、郁ちゃんとはキスしたんですか?


ふと、さっき見てしまった駒宮室長と郁ちゃんが並んで歩く後ろ姿を思い出してしまう。

郁ちゃんの恋する乙女の表情を思い返すと、鼻の奥がツンとしてしまった。

もう、ヤダヤダ

駒宮室長と郁ちゃんのことを想像するだけで悲しくなってしまって、私は頭を横に振って、想像を打ち消すと、ジョッキに残っていたビールを一気に飲み干そうとグラスに口をつける。

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