艶恋オフィス クールな室長に求愛されてます
私はしばらく唖然として、タクシーが走り去っていった方向をぼんやりと眺めていた。

ふふふっ……


ようやく現実に戻ってきた私は、なんだか笑いが混みあげてきてしまって、思わず頬を綻ばせた。


私は最寄りの駅から自宅までの道を、足早に帰る。

寒空の星は、やけに綺麗に瞬いていてまぶしい程だ。


さっきまで郁ちゃんの絶叫を何度も思い出しては、思わず頬を綻ばしていたけれど、酔いも少しずつ醒めてきた自宅までの道のりは寒さも手伝って、なんだか心を冷たい風が通り抜けていく。


駒宮室長、好きな人いるんだ。

郁ちゃんの話を思い出して、大きくため息を吐く。

吐き出したため息は、真っ白な息となって夜道に消えていった。

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