艶恋オフィス クールな室長に求愛されてます
「ありがとうございました」

助かったぁ。

駒宮室長が居なかったら、私今頃……

想像するだけで震え始める指先を握りしめて、私は駒宮室長にお礼を伝えて頭を下げる。


「ったく。手のかかる女だな」

大きな溜息と一緒に、疲れたような駒宮室長の言葉が降ってきた。

優しい言葉なんて期待はしていなかったけれど、駒宮室長の言葉に心が細る。

助かった安堵感なんて一気に吹き飛んでしまって、なんだか駒宮室長にそう思われていたことが悲しくて涙が滲む。


毎日必死で頑張ってきたのに、やっぱり私は手のかかる部下から脱却することなんて出来ないらしい。

仕事では絶対に泣かないようにしていたのに……。


さっきのシャンパンのせいにしよう。

どうやら私の心は限界らしい。

だけど、どうしても駒宮室長に涙なんて見せたくない。


私は下唇を噛みしめて、顔をあげ、無理矢理に笑顔を作って見せた。
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